「心」について探求していく心理学。心理学を学ぶことで、どのような職業に就けるのでしょうか?
実は、心理学には数多くの専門職があります。また、公務員としての道もあるほか、心理学の専門職でなくとも心理学を生かせる職業はたくさんあるのです。
今回は、心理学を生かせる職業を20選ご紹介します。
まずは、心理学に関する5つの国家資格から、なれる職業を紹介します。
国家資格は、国の法律に基づく資格です。信頼性が高く、有資格者でなければなれない職業もあります。
公認心理師は心理専門職の国家資格です。取得することで、医療や保健、教育、福祉など、人の心の問題が発生し得るあらゆる現場でカウンセラーとして働けます。
主な仕事内容は、心に問題を抱えた人にカウンセリングを通して心理的支援を行うことです。
公認心理師の資格を取得するには、年に1回実施されている公認心理師試験に合格する必要があります。筆記試験で、多肢選択方式となります。
受験資格を得るのに必要なのは、心理系の4年制大学および大学院での指定科目の履修です。最短でも6年間かかるため、公認心理師への道のりは短くありません。
ですが、公認心理師の資格を取得することで、心理学のプロフェッショナルとして確かな知識や技術を持っていることを証明できます。
精神保健福祉士はソーシャルワーカーの国家資格です。1つ前にご紹介した公認心理師と違うのは、心理的支援を行う対象が精神疾患を抱えた患者とその家族、周囲の人であることです。
主に、精神病院や医療施設において、精神疾患を抱えた患者の社会復帰を目指し、支援を行います。精神保健福祉士の資格を取得するには、年に1回実施されている精神保健福祉士試験に合格する必要があります。筆記試験で、五肢択一を基本とした多肢選択方式となります。
受験資格を得るにはいくつかのルートがありますが、福祉系の4年制大学で指定科目を履修するのが一般的です。精神疾患を抱えた患者が増え続けている現在、ますます需要が高まっている職業といえます。
社会福祉士はソーシャルワーカーの国家資格です。
障がい者や高齢者、ひとり親家庭など、日常生活を送るのに困難を抱えている人に対して心理的支援を行いつつ、福祉サポートにつなげるのが仕事内容です。
社会福祉士の資格を取得するには、年に1回実施されている社会福祉士国家試験に合格する必要があります。筆記試験で、五肢択一を基本とした多肢選択方式です。
受験資格を得るには、「福祉系大学ルート」「短期養成施設ルート」「一般養成施設ルート」がありますが、その中でも大学や実務経験の年数によってさまざまなルートがあります。もっとも一般的なのは、福祉系の4年制大学で指定科目を履修することです。社会福祉士もニーズが年々高まっている職業であり、今後ますます必要とされるでしょう。
キャリアコンサルタントはキャリアコンサルティングの国家資格です。
労働者の就業やキャリアについてコンサルティングを行うことが主な仕事内容です。企業内や大学のキャリアセンター、ハローワークなどで、労働者の職業選択やキャリアプラン、キャリアアップなどについて相談を受け、助言や支援を行います。
キャリアコンサルタントの資格を取得するには、年に数回(基本的に3回)実施されているキャリアコンサルタント試験に合格する必要があります。試験は、学科試験(筆記)と実技試験(論述および面接)で構成されています。
受験資格を得るには、
精神科医・心療内科医はどちらも人の心の不調を治療する医師職です。精神疾患や心に不調を抱えた患者が増加する一方の現在、需要が高まっています。
精神科医・心療内科医になるには、医師国家試験に合格して医師免許を取得することが必須です。受験資格を得るには、大学の医学部で最低6年間学んだ後、大学の卒業試験に合格し卒業する必要があります。
医師免許を取得できても、すぐに精神科医・心療内科医になれるわけではありません。研修医として2年間、大学病院や大病院などの臨床研修病院で臨床研修を積みます。
臨床研修が終わり、精神科や心療内科に勤めることで、精神科医・心療内科医としての仕事が行えるようになります。
次に、心理学の民間資格や専門職を7選ご紹介します。
臨床心理士は心理専門職の民間資格です。仕事内容は公認心理師とほとんど変わらず、資格を取得することでさまざまな現場でカウンセラーとして働けます。
公認心理師と異なり民間資格ですが、資格認定協会は内閣府の認可を受けていると同時に公認心理師よりも長い歴史を持つため、同等に信頼性の高い資格です。
臨床心理士の資格を取得するには、年に1回実施されている臨床心理士資格審査に合格する必要があります。試験は、筆記試験(多肢選択方式および論文記述)と面接試験で構成されています。受験資格を得るには、指定大学院や専門職大学院の修了が必要です。公認心理師と異なり、指定された大学院を修了すればよいため、最短2年間で取得できます。
産業カウンセラーは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定している民間資格です。
産業の場、すなわち仕事や職場で働く人々に対して心理的支援を行います。
職場の人間関係やストレスに関する相談を受けてアドバイスをしたり、キャリアアップについて助言したり、職場環境を改善したりするのが具体的な仕事内容です。
産業カウンセラーの資格を取得するには、年に2回実施されている産業カウンセラー試験に合格する必要があります。受験資格を得るには、協会が開催している講座を受講するか、4年制大学や大学院で指定科目を履修することが必要です。
心理カウンセラーは心理専門職で、心に悩みや問題を抱えた人の相談を受け、解決に導く「カウンセラー」としてあらゆる現場で活躍している職業です。
心理カウンセラーとして仕事を行うのに、資格は必須ではありません。しかし、資格があることでクライエントから信頼されやすくなるため、国家資格でも民間資格でも、何かしらの心理学に関する資格を取得しておくべきでしょう。
心理カウンセラーが活躍できる現場をいくつかご紹介します。
医療:精神病院や総合病院、メンタルクリニックなど
教育:学校(スクールカウンセラー)
福祉:児童相談所や介護施設など
企業:社内相談窓口(企業内カウンセラー)
心理カウンセラーは、心に悩みや問題を抱える人がいるすべての現場で求められる、活躍の幅が広い職業です。
メンタルトレーナーは、クライエントを心理的に支援することで、最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートする職業です。
主にスポーツ選手のもとで働くことが多いですが、ビジネスパーソンや学生をクライエントとすることもあります。心理カウンセラーと異なるのは、クライエントの目的達成のために、クライエントに降りかかるプレッシャーやストレスを管理し、心をポジティブな状態に導くことです。
メンタルトレーナーになるのに必要な資格はありませんが、JADP認定スポーツメンタルトレーナーやスポーツメンタルトレーニング指導士といった民間資格を取っておくと、専門性を証明できます。
また、特にスポーツ心理学についての知識を身に付けるとよいでしょう。
生活相談員は、主に介護施設で働きます。仕事内容は、利用者や家族の相談対応、介護職員やケアマネージャーなど関連職種との連携、利用者の入退所の手続きなどさまざまです。
利用者である高齢者やその家族の相談を受け、心理的支援を行うため、心理学の知識や技術が役に立つ職業です。
生活相談員になるには、各自治体が定める資格要件を満たす必要があります。
例えば、社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士などの資格が求められる場合があります。
スクールカウンセラーは教育現場で活躍するカウンセラーです。生徒や生徒の家族、教師に対して心理的支援を行います。
生徒からは相談を受け、悩みの解決をサポートします。また保護者や教師に対しては、生徒への接し方や問題について専門的知見からアドバイスを行うのが主な仕事内容です。
不登校やいじめなど、学校生活に大きな問題を抱えている生徒に対応するのも大切な業務です。
スクールカウンセラーになるには、公認心理師や臨床心理士の資格を取得していることや、一定以上の実務経験があることなどが求められます。
また、特に教育心理学や学校心理学についての知識や技術を身に付けるとよいでしょう。
心理学者は、心理学の研究を専門に行う職業です。
心理学について研究をし続け、論文発表や大学での講義、セミナーの開催、メディア出演など、研究結果を世に出したり心理学の知識を広めたりします。
心理学者になるには、大学の心理学部を卒業後、心理系の大学院に進学する必要があります。大学院生として研究する中で、研究発表で評価を得たり、教授のアシスタントとして研究に参加させてもらったりすることで、心理学者としての道が開かれます。
大学の教授や講師として講義を行いながら、日々研究に取り組むのが一般的な心理学者の働き方です。
心理学を生かせる公務員の職業もあります。以下でご紹介するのは、特に心理学の知識や技術が求められる職業3選です。
心理系地方公務員とは、心理学を業務に生かす地方公務員の通称です。
具体的には、都道府県や政令市の自治体職員として、児童心理司や心理判定員、相談専門員、心理技官、少年警察補導員などとして各機関で働きます。
心理系地方公務員は、自治体によって採用の有無や採用職種が異なります。また、公認心理師や臨床心理士などの資格を求められる場合もあれば、無資格でも試験を受けられる場合もありますし、年齢要件も各自治体で異なります。
試験は、筆記を中心とした一次試験と面接を中心とした二次試験で構成されるのが一般的です。
法務技官は、少年鑑別所や少年院、刑事施設で働く法務省の職員です。
入所した少年や受刑者に対して面接や心理検査を実施したり、再犯防止や社会復帰のためのカウンセリングを行ったりします。
法務技官になるには、「法務省専門職員(人間科学)採用試験 矯正心理専門職区分」に合格することが必要です。
受験資格には年齢制限のみが設けられており、21歳以上30歳未満であれば誰でも受験できます。21歳未満でも、大学や短期大学卒業見込みであれば受験が認められます。
家庭裁判所調査官は、裁判所の職員です。
家庭裁判所で取り扱う家庭事件や少年事件について調査を行うのが主な仕事内容です。事件の原因や背景を調べたり、当事者にカウンセリングを行ったりします。
家庭裁判所調査員になるには、「裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)」を受験して合格し、採用された後、裁判所職員総合研修所で2年間の研修を受ける必要があります。
受験資格は、30歳未満かつ、大学や大学院を卒業しているまたは卒業見込みであることです。
最後に、民間企業において、心理学を生かせる職業を6選ご紹介します。
接客業は、直接お客様と関わり、商品を紹介したりサービスを提供したりする職業です。
例えば、ショップの販売スタッフや飲食店のホールスタッフ、ホテルフロント、美容師などが該当します。
接客業では、お客様とのコミュニケーションが直接お客様満足度につながります。そのため、お客様に喜んでもらったり、信頼関係を築いたりするのに、心理学の知識や技術が大いに役立つのです。また、接客業ではお客様の本音を聞き出すのが大切です。何が欲しいのか、どうしてほしいのかを聞き出し、それに合ったサービスを提供することで、売上アップにも貢献できます。
営業職は、自社の商品やサービスの特徴や魅力をアピールすることで、購入や契約につなげる職業です。
ほとんどの民間企業には営業職があります。営業職が商品を売ったり、契約を取りつけてきたりすることで企業の利益が発生するため、なくてはならない職業です。
営業職は、主にお客様の抱える課題を解決する形で購入や契約につなげるため、お客様の本音を聞き出すテクニックや信頼してもらえるテクニックが欠かせません。
例えば、「一度断った後の提案は断りづらい」という心理を応用した「ドア・イン・ザ・フェイス」や、自分と同じような行動をとる人を信頼しやすくなる「ミラーリング効果」は、営業職でよく取り入れられている心理テクニックです。
教師は、小学校や中学校、高等学校などで、児童や生徒に教育を行う職業です。
教師は日々授業を行うだけでなく、児童や生徒から相談を受けることもあれば、保護者と1対1で接する機会も多くあります。
児童や生徒の悩みや問題を解決したり、保護者との信頼関係を築いたりするのに、心理学の知識は大いに役立つでしょう。
教師になるには、まず大学などで教職課程を履修し、教員免許を取得します。
そして、公立の学校で働くには都道府県や政令市などで実施されている教員採用試験に、私立の学校で働くには各学校の採用選考に合格する必要があります。
キャリアアドバイザーは、求職者の就職や転職をサポートする職業です。就活エージェントや転職エージェントとも呼ばれます。
主に人材会社に勤め、求職者に企業や仕事を紹介するのが仕事内容ですが、求職者には「自分がどのような仕事に向いているか分からない」という人も多いです。そういった人の話に傾聴して、どのような仕事が向いているか分析することも多くあります。求職者との信頼関係の構築やヒアリングに、心理学が役立ちます。
マーケティング職は、商品やサービスが売れる仕組みをつくる職業です。
具体的には、市場調査でお客様のニーズを調べたり、新しい商品やサービスを企画したり、広告戦略を練ったりします。
一見心理学との関係が薄く感じられるかもしれませんが、商品やサービスを売るにはお客様の心理を把握し、「買いたい」と思わせる工夫が欠かせません。
例えば、特定の対象に何度も接触するとポジティブな印象を抱くようになる「単純接触効果」や、ある行動を禁止されると逆にやりたくなってしまう「カリギュラ効果」は、マーケティング職でよく取り入れられている心理テクニックです。
心理学を生かせる職業を20選ご紹介しました。心理専門職から公務員、民間企業での各職種まで、心理学を生かせる職業はたくさんあります。
特に心理専門職を目指すなら、心理学に関する資格はぜひ取得しておきたいところです。受験資格に、大学で心理学について学ぶことが求められるものもあるため、心理学科への進学も考えてみてはいかがでしょうか。
立正大学心理学部には、「臨床心理学科」と「対人・社会心理学科」の2学科があります。
臨床心理学科では心を見つめ、支える力を。対人・社会心理学科では人と人、人と社会の関係を心理学的に研究しながら、対人スキルを養う力を身に付けられます。
学科選びに迷ったら、気になるキーワードからあなたにおすすめの学科が分かります。以下から、ぜひ立正大学心理学部とおすすめの学科をチェックしてみてください。