2025/05/21

カウンセラーの代表的な資格である臨床心理士。
カウンセラーやほかの心理職を目指すなら、ぜひ取得したい資格です。
今回は、そんな臨床心理士の資格について、受験資格や試験内容を詳しく解説します。
臨床心理士の資格でなれる職業もいくつか紹介するので、カウンセラーなどの心理職に興味がある方はぜひ参考にしてください。

臨床心理士とは

臨床心理士とは、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定している心理専門職の民間資格です。
民間資格といっても、臨床心理士は1988年に認定がスタートした歴史ある資格であり、2017年に心理専門職の国家資格「公認心理師」が誕生してなお、権威性の高さからニーズが強い資格です。
臨床心理士の専門業務として、協会は以下の4つを挙げています。

1. 臨床心理査定

   心理テストやカウンセリングを通して、クライエントの心の悩みや問題を明らかにし、どのように支援するかを定める。
   
   

2. 臨床心理面接

   個々のクライエントに合わせたさまざまな臨床心理学的技法を用いて、心の支援を行う。
   
   

3. 臨床心理的地域援助

   地域住民や学校、職場など、コミュニティの心の健康や被害への支援活動を行う。
   
   

4. 上記1.～3. に関する調査・研究

   適切な心の支援を行い続けるために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施する。

出典：公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 │ 臨床心理士とは—臨床心理士の専門業務


ここからは、臨床心理士の資格について、受験資格や試験に関する内容を詳しく解説していきます。

臨床心理士の資格の取り方‐受験資格は？

臨床心理士の資格を取るには、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が年に1回実施している資格審査に合格する必要があります。
ただし、資格審査は誰でも受けられるわけではなく、受験資格を得るには一定の条件を満たさなければなりません。
ここからは、臨床心理士の資格審査を受けるための受験資格と、受験資格を得る方法について解説します。

受験資格

受験資格を得るには、日本臨床心理士資格認定協会が指定している以下の7つのいずれかに該当し、なおかつそれを証明できる書類を提出できることが条件となります。

1. 第1種指定大学院（修了後の心理臨床経験不要）を修了し、受験資格取得のための所定条件を充足している
2. 第1種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
3. 第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
4. 第2種指定大学院を修了し、修了後2年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している
5. 学校教育法に基づく大学院において、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了した
6. 諸外国で上記1. または3. のいずれかと同等以上の教育歴および日本国内における2年以上の心理臨床経験を有する
7. 医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する

これを要約すると、以下のとおりとなります。

• 第1種指定大学院を修了していること
• 第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を積むこと
• 専門職大学院で、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了すること
• 諸外国で、第1種指定大学院または第2種指定大学院と同等以上の教育を受けており、なおかつ日本国内で2年以上の心理臨床経験を積むこと
• 医師免許を取得し、取得後2年以上の心理臨床経験を積むこと

なお、「心理臨床経験」とは、心理相談員やカウンセラーとして、教育相談機関や、病院などの医療施設で就業した経験をいいます。
有給が原則となるので、ボランティアや研修員として働いていた場合は認められないため注意しましょう。

出典：公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 事業内容—臨床心理士資格認定事業 臨床心理士資格認定の実施

受験資格を得られる大学院

受験資格を得るのに一般的なルートは、前項で紹介した、

• 第1種指定大学院を修了していること
• 第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を積むこと
• 専門職大学院で、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了すること

このいずれかになるでしょう。
では、第1種指定大学院、第2種指定大学院、専門職大学院には、どの大学院が該当するのでしょうか？
日本臨床心理士資格認定協会が2023年8月1日時点で認定しているのは、第1種指定大学院が148校、第2種指定大学院が8校、専門職大学院が5校です。すべて、公立・私立合わせた数です。

出典：公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士受験資格に関する指定大学院・専門職大学院一覧

立正大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻は、第1種指定大学院に指定されています。
臨床心理士の資格取得を目指す方は、立正大学大学院での学びもぜひ検討してみてください。

受験資格を得るために学ぶカリキュラム

臨床心理士の資格を得るには、どのようなカリキュラムで学ぶ必要があるのでしょうか？
以下は、日本臨床心理士資格認定協会が発表している「大学院指定申請に関する参考資料」において、第1種指定大学院に対し、「以下の臨床心理学又はその近接領域の授業科目を開設すること」と求めているカリキュラムです。
まず、必須科目として、以下の5つの科目が指定されています。

次に、選択必修科目群として以下の5つの群が指定されています。

第1種指定大学院では、上記の必須科目と選択必修科目群を学ぶこととなります。

臨床心理士の資格の取り方 - 試験内容は？

受験資格を得たら、いよいよ資格審査です。
ここでは、受験資格を得てから資格取得までの流れやスケジュール、試験内容など、資格審査についての詳細に加えて、受験費用や試験の合格率なども解説します。

資格取得までの流れ

臨床心理士の資格を取るには、受験資格を得て資格審査を受けるだけでなく、いくつかのステップを踏む必要があります。
受験資格を得てから、資格を取得するまでのおおまかな流れは以下のとおりです。

1. まず、資格審査を受けるための「臨床心理士資格審査申請書」を、日本臨床心理士資格認定協会に請求する必要があります。
   請求は「臨床心理士資格審査申請書請求」サイトから所定の期間内に行えます。
2. 1). の手続きで発行されたコンビニエンスストア専用受付番号で、申請書の支払い（1部1,500円）を行います。
3. 申込と入金が確認され次第、協会の7営業日以内に「臨床心理士資格審査申請書」が発送されます。申請書および必要書類の提出と、審査料の納付を行います。
4. 提出した書類と審査料の納付、受験資格の有無を協会が確認すると、「臨床心理士資格審査受験票」が送付されます。
5. 資格審査を受験します。
6. 合格通知を受け取ったら、すぐに臨床心理士として認められるわけではありません。
   資格認定証書の交付手続きを、所定期日までに完了する必要があります。
7. 協会から、「臨床心理士」の資格認定証書と、携帯用の身分証明書として本人の顔写真を貼付した資格登録証明書（IDカード）が発行・送付されます。

このように、資格審査の前後で必要なステップがいくつかあるので、スケジュールには余裕を持ちましょう。
出典：公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士になるには—資格審査の実施

スケジュール

臨床心理士の資格審査は、年に1回、東京で実施されます。
例年、7～8月に受験申込、10月に一次試験、11月に二次試験、合格発表が12月というスケジュールです。
なお、「臨床心理士資格審査申請書」の請求期間は、受験申込期間とほぼ同時に始まるものの1カ月弱早く終了するため、注意してください。
最新の資格審査のスケジュールについては、以下をご覧ください。

公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士になるには—資格審査スケジュール

試験内容

試験は、一次試験と二次試験の2つで構成されています。
一次試験は筆記試験で、マークシートによる「多肢選択方式試験」と「論文記述試験」です。
「多肢選択方式試験」は100題出題されます。試験時間は2時間30分です。
「論文記述試験」は、心理臨床に関する1題のテーマについて、解答用紙に1,001字以上1,200字以内で論述記載します。試験時間は1時間30分です。
二次試験は面接で、一次試験の「多肢選択方式試験」の成績が一定以上の人にのみ実施されます。
受験者1人に対し、面接委員2人で行われます。

受験費用

臨床心理士の資格を得るまでに、以下の費用がかかります。
資格審査申請書の請求費用：1,500円
資格審査料：30,000円
登録料（合格後）：50,000円
これに加えて、試験場所の東京から遠方に住んでいる場合は、交通費や宿泊費がかかります。

試験の合格率

資格審査の合格率は、例年6割超で推移しています。
2019年から2024年までの6年間の受験者数・合格者数・合格率は以下のとおりです。

合格後の流れ

資格審査に合格しても、そのまま臨床心理士として認められるわけではありません。
合格通知を受け取った後、資格認定証書の交付手続きを所定の期日までに完了することで、日本臨床心理士資格認定協会から「臨床心理士」の資格認定証書と、携帯用の身分証明書として本人の顔写真を貼付した資格登録証明書（IDカード）が発行されます。
以上をもって、協会が発行する「日本臨床心理士名簿一覧」に氏名が登録され、臨床心理士として活動できるようになるのです。
なお、臨床心理士の資格は5年ごとに更新の手続きが必要です。
資格更新には、5年の間に協会が開催する研修会や、所定の研修会や学会などに参加する必要があります。
詳しくは、以下からご確認ください。
公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 事業内容—臨床心理士資格認定事業 臨床心理士資格更新制度

臨床心理士の資格でなれる職業

臨床心理士の資格を取得すると、どのような職業に就けるようになるのでしょうか？
臨床心理士の資格は、カウンセラーの資格として代表的な資格かつ信頼性の高い資格です。
ここで紹介する仕事に就くために、必ずしも臨床心理士の資格が必要なわけではありません。
しかし、臨床心理士の資格を持っていることで、なれる可能性は高まりますし、資格手当などよい待遇を受けられることもあります。
臨床心理士の資格を持っていることでなれる職業を紹介していきます。

• カウンセラー

  臨床心理についての専門知識を用いて、心に悩みや問題を抱えた方とカウンセリングなどを行い、問題解決に導いたり、サポートをしたりする職業がカウンセラーです。
  例えば医療施設では、精神疾患のある患者だけでなく、病気やケガによって精神的な不安を抱えた患者に対しても支援を行っていきます。
  カウンセラーは、心に悩みや問題を抱えた方がいるすべての場所で必要とされる職業です。
  
  

• スクールカウンセラー

  スクールカウンセラーは、学校で勤務するカウンセラーです。
  主にいじめに遭った生徒や不登校の生徒、学習や家庭に問題を抱えた生徒の相談に乗り、カウンセリングを行いますが、必要に応じて生徒の保護者や教師にアドバイスを行うなど、対象は幅広いです。
  
  

• キャリアカウンセラー

  キャリアカウンセラーは、クライエントが適切な職業の選択やキャリア形成を行えるよう支援する職業です。
  ハローワークや民間の人材派遣会社などに勤めることが多く、カウンセリングや職業適性検査、職業経歴の分析などを通して、クライエントのキャリアをサポートしていきます。
  
  

• 公務員

  公務員としてのカウンセラーは、保健施設や裁判所、刑務所、警察署などで勤務します。
  例えば保健所で働く場合、さまざまな地域住民のさまざまな相談に乗り、悩みの解消や必要に応じて他機関との連携を図ります。
  
  

まとめ

臨床心理士の資格を取得するには、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が年に1回実施している資格審査に合格する必要があります。
受験資格を得るには、指定の大学院を修了するのが一般的です。
立正大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻は、第1種指定大学院に指定されており、臨床心理士や公認心理師の資格を持つ15人の専任教員のもと、実践的な研究を行います。
臨床心理士の資格取得を考えている方は、ぜひ立正大学での研究も検討してみてください。
また、心理学に興味がある、まだ高校生だけど臨床心理士を目指したい、という方は、立正大学 心理学部に進学することも考えてみてはいかがでしょうか。
立正大学 心理学部と、立正大学大学院 心理学研究科 臨床心理学専攻について、詳しくは以下からホームページをご覧ください。