「街の法律家」である司法書士。登記業務を独占業務としており、その専門性や年収の高さから、「司法書士になりたい」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、司法書士の仕事内容から年収、なる方法、キャリアまで詳しく解説します。
司法書士に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
出典:司法書士を目指す人へ日本司法書士会連合会ホームページ
初めに、司法書士とはどのような仕事なのかを解説します。
司法書士は国家資格であり、市民に身近な法律事務のスペシャリストです。「街の法律家」として親しまれており、個人や企業の財産・権利を守るために不可欠な役割を担っています。
司法書士の最大の特徴は、法務局への「登記」手続きの代理権を持っている点です。不動産売買や会社設立といった重要な場面で、依頼者に代わって複雑な手続きを完了させることが主な仕事です。
また、一定の研修を受けた「認定司法書士」であれば、簡易裁判所において弁護士と同様に法廷に立つこと(訴訟代理)も認められています。独立開業がしやすく、定年がないため、生涯活躍できる専門職として高い人気を誇ります。
司法書士の業務範囲は多岐にわたりますが、独占業務であり仕事の中心となるのが「登記業務」です。土地や建物の購入・相続時に行う「不動産登記」や、会社設立・役員変更時に行う「商業登記」を正確かつ迅速に処理します。
これに加え、裁判所や検察庁に提出する書類(訴状や遺産分割協議書など)の「書類作成業務」も重要な柱です。近年需要が高まっているのが、高齢者の財産管理をサポートする「成年後見業務」や、遺言書の作成支援などの「相続・遺言業務」です。
さらに認定司法書士であれば、140万円以下の借金問題や家賃滞納などの民事トラブルを解決する「簡裁訴訟代理等関係業務」も行えます。このように、書類作成から紛争解決まで、人々の生活に密着した法律サポートが主な仕事です。
令和6年賃金構造基本統計調査によると、司法書士の年収は765.3万円です。これは、給与所得者全体の平均年収478万円(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査より)と比較して、非常に高い水準であることが分かります。
司法書士は法律に関する高い専門性を求められるほか、独占業務も行えることから、常に高い需要がある職業です。
なお、この数値はあくまで平均で、勤務先や働き方次第で大幅な収入アップは可能です。例えば、独立開業する、ほかの士業と兼業するなどは代表的な方法ですが、司法書士のキャリアについては後の章で詳しく解説します。
出典:令和6年賃金構造基本統計調査厚生労働省ホームページ
出典:令和6年分民間給与実態統計調査国税庁ホームページ
司法書士になるには、大きく分けて2つのルートが存在します。
まず、年に1回実施される「司法書士試験」に合格するルートです。この試験には年齢・学歴・国籍などの受験資格がなく、誰でも挑戦できるのが特徴です。
もう一つは、裁判所事務官や検察事務官などを10年以上務め、法務大臣の認定を受ける「特認」ルートです。ただし、こちらは特定の公務員経験者に限られるため、これから目指す一般の方にとっては、司法書士試験合格が一般的なルートとなります。
なお、どちらのルートを経た場合も、最終的に日本司法書士会連合会の名簿に登録し、所定の研修を修了することで、初めて司法書士として業務を行えます。
ここからは、司法書士試験について解説します。
司法書士試験には、受験資格の制限が一切ありません。
弁護士や税理士、社会保険労務士などの他資格では、大学の卒業や実務経験などの要件が求められることが一般的です。しかし、司法書士試験には年齢・学歴・国籍・実務経験などの要件がありません。
誰にでも平等に門戸が開かれており、実際に大学生から主婦、セカンドキャリアを目指す中高年の方まで、幅広い層が受験しています。「実力さえあれば誰でも合格できる」という点が、この資格の大きな魅力といえるでしょう。
試験は年1回実施されます。スケジュールは以下のとおりです。
試験は「筆記試験」と「口述試験」で行われますが、勝負は実質的に筆記試験で決まります。
筆記試験は午前と午後の部に分かれており、マークシート形式の「択一式」と、実際に登記申請書などを書く「記述式」があります。科目は憲法、民法、刑法、商法(会社法)に加え、不動産登記法や商業登記法など全11科目です。
| 時間帯 | 形式 | 主な科目・内容 |
|---|---|---|
| 午前 | 択一式(35問) | 憲法、民法、刑法、商法(会社法) |
| 午後 | 択一式(35問) | 民事訴訟法、不動産登記法、商業登記法など |
| 午後 | 記述式(2問) | 不動産登記、商業登記の申請書作成 |
特に主要4科目(民法・商法(会社法)・不動産登記法・商業登記法)は配点が高く、全体の約8割を占めるため、これらを重点的に攻略することが合格へのカギとなります。
司法書士試験の合格率は、例年3〜5%程度で推移しており、極めて狭き門です。
この試験が「難しい」といわれる最大の理由は、基準点(足切り)の制度と相対評価にあります。
基準点(足切り)とは、最低でも取っておかなければならない点数のことです。午前の択一、午後の択一、午後の記述の3つのパートすべてにおいて、それぞれの基準点をクリアしなければなりません。1つでも基準点を下回ると、総合点が高くてもその時点で不合格です。
苦手科目を捨てることができないということを意味し、全科目をまんべんなく高得点レベルに仕上げる必要があります。
単なる暗記だけでなく、法的な思考力や、時間内に膨大な問題を処理する事務処理能力も問われるため、戦略的な学習計画が不可欠です。
司法書士になるための費用は、受験料よりも合格後の登録・研修費が大半を占めます。
まず、受験手数料は8,000円です。合格後、登録免許税や司法書士会への入会金、バッジ代などの登録関連費で約10万〜15万円かかります。
さらに、実務を行う上で必須となる各種研修(新人研修・特別研修)の受講料などが、合計で約25万円です。
これらを合わせると、登録までに約35万〜40万円の実費が必要となります。
司法書士試験について解説してきました。合格するには、入念な準備が欠かせません。ここでは、司法書士試験の対策について具体的に解説していきます。
一般的に、初学者が司法書士試験に合格するために必要な勉強時間は3,000時間といわれています。
これは、仮に毎日3時間の勉強を欠かさず続けたとしても、約3年(1,000日)かかる計算です。1日8〜10時間勉強できる環境であれば、1年〜1年半での短期合格も理論上は可能ですが、多くの受験生は学校に通ったり、働いたりしながら学習しているため、2〜3年計画で挑むのが現実的です。
行政書士(約800〜1,000時間)や宅地建物取引士(約300〜400時間)と比較しても圧倒的なボリュームがあり、単なる知識の暗記だけでなく、事例を読み解く法的思考力の養成に多くの時間を費やすことになります。
長期間モチベーションを維持するための「生活リズムの構築」も、勉強時間の一部と捉えるべきでしょう。
学習の鉄則は、「主要4科目の徹底」と「過去問の反復」です。
まずは、全11科目のうち、配点の約8割を占める「民法」「商法(会社法)」「不動産登記法」「商業登記法」を重点的に学習しましょう。特に民法と不動産登記法は関連性が強いため、セットで学習すると理解が深まります。マイナー科目は直前期に集中して覚えるなど、メリハリをつけることが重要です。
また、インプットよりアウトプットが大切です。テキストを読む(インプット)だけでは合格点は取れません。早い段階から過去問(アウトプット)に取り組み、出題傾向やひっかけ問題のパターンを体で覚える必要があります。過去問を10周以上繰り返し解いている方も、合格者には少なくありません。
そして、午後の記述式は正確さとスピードが命です。最初に登記申請書の「雛形(フォーマット)」を完璧に暗記し、何も見ずに書けるようにしましょう。その上で、演習問題を通じて事実関係を整理し、適切な登記を判断する訓練を積みます。
学習スタイルには主に「独学」「通学スクール」「通信講座」の3つがあります。
これから大学進学を控えている方には、「司法書士試験対策講座を開講している大学に進学する」というのも有力な選択肢となります。
立正大学 法学部はその一つで、法学部教員が直接指導する課外ゼミナールを3年次から設置しています。公務員試験やほかの士業資格取得についても強力にバックアップしているため、ぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。
司法書士になった暁には、どのようなキャリアが待っているのでしょうか。
司法書士になったら、まずは既存の司法書士事務所や司法書士法人に就職し、「勤務司法書士」として働くのがもっとも一般的なスタートです。
最大のメリットは、安定した給与を得ながら実務経験を積める点です。試験勉強で得た知識と現場の実務にはギャップがあるため、先輩司法書士の指導の下、登記申請のシステム操作や顧客対応、書類作成のノウハウを安全に学ぶことができます。
近年では、数名の小規模事務所だけでなく、全国展開する大手司法書士法人も増えています。大手では福利厚生が整っており、特定の分野(例えば大手金融機関からの決済業務や、債務整理など)に特化した専門スキルを磨くことが可能です。
独立リスクを負わず、組織の一員としてキャリアアップを目指す「サラリーマン司法書士」として、定年まで勤め上げるスタイルも定着しつつあります。
司法書士の醍醐味であり、多くの司法書士が最終目標とするのが「独立開業」です。
自分の裁量で仕事ができ、定年もありません。努力次第で年収1,000万円以上を目指せる夢のある働き方です。自宅の一部を事務所にするなど、初期費用を抑えて開業できるのもメリットでしょう。
ただし、独立後は「法律家」としての能力だけでなく、「経営者」としての能力が問われます。銀行、不動産会社、税理士などへの営業活動を行い、自力で案件を獲得しなければなりません。
地域に密着して「街の法律家」として相談に乗るスタイルや、成年後見業務に特化するスタイルなど、自分の強みを生かした事務所経営ができる自由度の高さが魅力です。
司法書士資格を核に、ほかの資格やビジネスと組み合わせる「兼業」で、独自の市場価値を生み出すキャリアです。
もっとも相性がよいのは、行政書士との兼業です。行政書士として許認可申請を行い、会社設立後の登記を司法書士として引き受けるなど、顧客に対してワンストップサービスを提供できます。
また、土地家屋調査士との兼業も強力です。不動産の「表示の登記(測量など)」と「権利の登記」の両方を一括で行えるため、不動産業者や個人の顧客からの信頼が厚くなります。
最近では、不動産会社に勤務しながら社内司法書士として働くケースや、ファイナンシャルプランナー(FP)の知識を生かして相続・資産承継コンサルティングを行うケースも見られます。単なる手続き代行にとどまらず、複合的な視点から顧客の課題を解決するコンサルタントとしての活躍が期待されています。
今回は、司法書士資格の取得方法やキャリアなどについて、詳しく解説しました。
司法書士試験合格までは長く険しい道のりになりますが、その後のキャリアを描きながら、通学スクールや通信講座など自分に合った方法で勉強を進めていきましょう。
立正大学 法学部では、司法書士試験対策の課外ゼミナールを3年次から設置。ほかにも、公務員試験対策講座や他資格の試験対策講座も開講しているため、「進路を変えたい」「ほかの資格も並行して対策したい」という場合も安心です。
これから大学進学を控えており、将来は司法書士になりたいと考えている学生さんは、立正大学法学部をぜひご検討ください。
立正大学法学部の特長は、徹底した少人数教育、大学内にとどまらないフィールドワーク、経験豊かな実務家による教育とともに、現代社会の諸問題に即応した科目の充実にあります。また、法学部独自に多彩な課外講座が展開されてもいます。立正大学法学部は、正課および課外での教育により、学生の希望進路の実現を後押しするだけでなく、リーガルマインド(法的思考力)を身につけた一人の社会人として社会や地域に貢献できる人材の育成に尽力しています。
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