出典:日本防災士機構認定特定非営利活動法人
近年、地震や台風、集中豪雨など、大規模な自然災害が多発する中で、「防災士」という資格への注目が高まっています。
防災士は、認定特定非営利活動法人 日本防災士機構が認定する民間資格です。「自助」「共助」「協働」を原則として、社会のさまざまな場で防災・減災のために活動できる、十分な知識と技能を有することを証明します。
「自助」「共助」「協働」の意味は、以下のとおりです。
防災士は特に「共助」の担い手として、中心的な役割を期待されています。
防災士には、主に3つの役割が期待されます。
まずは、平常時の活動です。自分と家族を守るために、我が家の耐震補強や家具固定、備蓄などを進めつつ、同じように災害への対策を行うよう周囲にも活動を広めます。自主防災組織や消防団の活動にも積極的に参加することが望ましいです。
次に、災害時の活動です。その場その場で自分の身を守りながら、避難誘導や初期消火、救出救助活動などにあたります。被災地支援活動への参加も大切です。
最後に、志と使命感を持って活動することです。防災士は民間資格で、資格取得により特定の権利が得られたり、行動が義務付けられたりすることはありません。あくまで、自発的に防災ボランティア活動を行うことになります。
一方で、防災士の社会的評価と期待は急速に高まっている背景があり、防災士への信頼とその資格の意義を意識しながら、志と使命感を持って活動することが求められます。
防災士の資格取得までの過程で身につけた知識や、防災士の資格が役に立つ場面を、以下にまとめました。
災害発生直後の混乱した状況下で、防災士の知識と技能は人命を救う力となります。
まず、自らの安全を確保する「自助」を徹底した上で、初期消火や倒壊した家屋からの救出救助、応急手当といった「共助」の先頭に立つことができます。
また、地域住民への的確な避難誘導、避難所の開設・運営支援においてもリーダーシップを発揮できるでしょう。行政やボランティア組織と連携する「協働」のパイプ役や、必要な物資や情報を被災者へ届けるための調整役としての働きも期待されます。
冷静な判断力と体系的な知識に基づき、混乱した中でも秩序を保ち、被害の拡大を防ぐ重要な役割を担います。
防災の基本の一つは「自助」、すなわち「自分の命は自分で守る」ことです。
防災士の資格を持つことで、家庭内での防災対策を具体化し、そのレベルを格段に引き上げられます。
例えば、地震に備えた家具の固定、ガラス飛散防止フィルムの貼り付け、非常持ち出し袋や備蓄品(食料、水、簡易トイレなど)の適切な管理や点検を主導できます。
また、家族全員で地域のハザードマップを確認し、複数の避難経路や避難場所、災害時の連絡方法を具体的に取り決める際にも、的確かつスムーズに進められるでしょう。
家族の防災意識を高め、災害時に慌てず行動できる「家庭内防災リーダー」としての中核を担います。
企業や組織において、防災士の存在は事業継続計画(BCP)を推進する上で不可欠です。
防災士は、職場の建物や設備の安全点検、防災マニュアルの見直し、事業継続のための優先業務の特定などについて、専門的な知見から貢献できるでしょう。
また、従業員の防災意識向上のための研修会や、火災・地震を想定した実践的な避難訓練を企画・実施する役割も担えます。
災害発生時には、従業員の安否確認や来客の安全確保、帰宅困難者対策など、組織的な対応を主導します。従業員と会社の双方を守るための防災体制構築において、その専門知識が直接的に役立つことは間違いありません。
防災士は、地域における「共助」と「協働」の中核です。自主防災組織や町内会・自治会において、防災活動のリーダーとして活躍することが期待されます。
具体的には、地域のハザードマップに基づいた危険箇所の点検、住民参加型の防災訓練(消火訓練、避難所運営ゲームHUGなど)の企画・運営を行います。
特に、高齢者や障害者、乳幼児など、災害時に特別な配慮が必要な方々の避難支援体制づくりにおいては、名簿の整備や支援担当者の割り当てなどを、地域住民と行政の間で調整する重要な役割を果たすことになるでしょう。
日頃から地域コミュニティで顔の見える関係を築き、地域の防災力を高める「協働」の推進役となります。
ここでは、防災士の資格の取得方法と、特例制度や自治体による助成金について紹介します。
防災士の資格取得までのステップは、大きく分けて4つです。
出典:日本防災士機構が防災士認証要件として認めている主な救急救命講習等一覧認定特定非営利活動法人 日本防災士機構
ここまで紹介したステップは一般の方向けの取得方法ですが、警察官など防災や災害対応、応急手当などに実績のある方については、特例制度が設けられています。
対象となる方は、以下のとおりです。
出典:特例各種ご案内認定特定非営利活動法人 日本防災士機構
また、防災士資格取得費用・防災士教本代・受験料・認証手続料について、一定条件を満たした住民に対して、費用の一部または全額を助成している自治体があります。 講座受講前に申請を行うことが必須の場合も多いため、防災士の資格取得を考えている方は、自分の住んでいる自治体が助成を行っているか必ず確認してください。出典:自治体による資格取得への助成認定特定非営利活動法人 日本防災士機構
なお、詳細はお住まいの自治体の防災課などにお問い合わせください。「防災士の資格が役立つ場面」でも少し触れましたが、防災士の資格を取得するメリットについて、より広い視点から見ていきましょう。
防災士資格の最大のメリットは、災害に関する専門的かつ体系的な知識を深く学べる点です。
地震や津波、台風、豪雨など、さまざまな災害が発生するメカニズムから、それらが社会や人体にどのような被害をもたらすかを理解します。これにより、「なぜこの備えが必要なのか」を論理的に把握することが可能です。
学習を通じて、ハザードマップの正しい読み解き方、本当に必要な備蓄品の種類と量、効果的な家具の固定方法、安全な避難経路の選定など、具体的な「自助」のスキルが格段に向上します。
これまで断片的だった防災情報が整理され、「知っている」レベルから「理解して行動できる」レベルへと引き上げられるため、自分自身と大切な家族の命を守るための、根拠に基づいた行動指針を持てるようになるでしょう。
防災士には、地域や職場で「共助」を推進するリーダーとしての役割も期待されます。
研修では、AEDの使用法を含む応急手当、初期消火、避難誘導、安否確認の方法など、非常時に求められる実践的なスキルも習得します。
大規模災害が発生した直後、行政による「公助」がすぐに行き届かない状況下では、地域住民同士の助け合いが被害を最小限に抑えるカギです。防災士はその専門知識を背景に、パニック状態になりがちな現場で冷静に状況を判断し、周囲の人々を導きます。
避難所運営の初期段階で中心的な役割を担ったり、地域の避難訓練で率先して動いたりと、的確な判断力で「地域の防災リーダー」として行動できる存在になれるでしょう。
取得した知識と資格は、社会活動やキャリア形成の場面でも活用できます。
もっとも代表的なのは、地域の自主防災組織や町内会・自治会での活動です。防災訓練の企画・運営や防災マップの作成、住民向けの啓発セミナー開催などを通じて、地域の防災力向上に直接貢献できます。
また、企業においても防災士の需要は高まっており、事業継続計画(BCP)の策定担当者や、社内の安全衛生委員として、職場の安全確保に専門知識を生かすことが可能です。
さらに、ボランティア活動にとどまらず、防災アドバイザーとして独立したり、防災関連のNPO法人で活動したり、防災グッズの開発・販売に関わったりと、防災を専門的なキャリアやビジネスにつなげる道も開けます。
ここでは、防災士の資格についてのよくある質問とその回答をまとめました。
防災士の資格は、認定特定非営利活動法人 日本防災士機構が認定する民間資格です。
資格を取得するには、
防災士資格は民間資格なので、特定の職業において必須資格となるケースはありません。
しかし、企業や地域の防災意識の高まりを受け、この資格を持つ人材を高く評価する企業・団体は年々増加しています。特に、企業の事業継続計画(BCP)の策定・推進を担う総務部門や、従業員の安全衛生を管理する部門では、専門知識を持つ人材として重宝されています。
また、建設業や不動産管理業、インフラ関連企業、福祉・介護施設、大型商業施設など、地域住民や利用者の安全に直結する業界においては、防災士の知識は大きな強みとなるでしょう。
単に資格を持つだけでなく、その知識を職場でどう生かしたいかを具体的にアピールすることで、就職や転職、社内でのキャリアアップにおいて有利に働く可能性は十分にあるといえます。
防災士の資格に有効期限はありません。一度取得すれば、更新のための講習受講や更新料の支払いなども不要で、生涯有効な資格です。
ただし、注意点もあります。災害対策に関する知識や技術、関連する災害対策基本法などの法律は、新たな災害の教訓や研究に基づき、年々見直され更新されていきます。
資格取得時に学んだ知識が、数年後には古くなってしまう可能性もあるのです。そのため、防災士として活動する上では、資格取得後も自ら積極的に最新情報を学び続ける自己研鑽が強く推奨されます。
日本防災士機構が提供するスキルアップ研修に参加したり、ニュースや自治体の情報にアンテナを張ったりして、知識のアップデートを続けることが重要です。
ここまで、防災士の資格について解説してきました。防災について興味があり、「地球環境そのものを詳しく知りたい」「防災に関する知識を仕事に生かしたい」と思った方もいるかもしれません。
そのような方は、ぜひ立正大学 地球環境科学部への進学をご検討ください。地球環境科学部では、その名のとおり地球環境について、「環境システム学科」と「地理学科」のそれぞれで深く学ぶことができます。
環境は、社会制度や人間活動、そのほかさまざまな要因が複雑に絡み合って成り立っているものです。環境システム学科では、気圏・水圏・地圏における生態系を中心とする環境問題を、理学的な方法を用いて学際的にアプローチしていきます。
大きな特徴は、生物圏・地圏・環境情報に関する知識を習得することを目的とする「生物・地球コース」と、気圏・水圏・環境情報に関する知識を習得することを目的とする「気象・水文コース」の2つの履修コースに分かれて、環境科学のスペシャリストを目指す点です。
気象予報士や環境測量士、自然再生士、測量士、技術士など、環境への理解を深めるのに役立つさまざまな資格の取得も目指せます。
地理学科は、人間と地球環境との関係性を「地域」という視点から探求する学科で、それぞれの地域の特性や問題点を理解した上で、解決方法を見つけ出していくことを目指します。
観光や都市、まちづくり、教育、交通、農業、自然保護、環境問題など、幅広い分野を扱うのが特徴で、バラエティ豊かなフィールドワークも魅力です。
GIS学術士や地域調査士といった地域調査関連の資格や、国内旅行業務取扱管理者といった旅行関連の資格取得を目指せます。地域に根差した仕事をしたい方や、地域での活動を通して社会貢献したい方にはおすすめの学科です。
防災士の資格について詳しく解説してきました。基本的には、所定の講座を受講し試験に合格、さらに救急救命講習を受けることで、資格を取得できるようになります。
防災士の資格を取得することで、いつ起こるか分からない災害に、災害時だけでなく日常から対応する力が身につくでしょう。
自然災害、ひいては地球環境についてもっと知りたい、地球環境に関する仕事に就きたいという方は、ぜひ立正大学 地球環境科学部への進学をご検討ください。
環境システム学科と地理学科の2つの学科を擁しており、それぞれで学生さん一人ひとりの興味に沿った専門的な学びを得られます。
「地球の問題に挑む。」地球環境科学部の学びの柱は、フィールドワークとアクティブ・ラーニング。自然環境や社会、地域の諸問題を五感で捉えながら発想力と行動力を培い身近なことから大きな問題まで、多様な課題を解決できる専門家を目指します。
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