教員免許の種類や取り方やその後のキャリアについて解説

立正大学コラム

2025/09/24

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教育を通して、子どもたちの成長を支える学校の先生。
やりがいはもちろんのこと、公務員としての安定性にも魅力を感じて「学校の先生になりたい」と志す学生さんは多いのではないでしょうか。
学校の先生になるには、学校の種類や教える科目によって、異なる種類の「教員免許状」を取得することが必要です。
この記事では、教員免許の種類や取り方に加えて、取得後のキャリアについて詳しく解説します。

教員免許とは

教員免許とは、日本の学校で先生として教壇に立つことを許可するもので、正式には「教員免許状」といいます。
日本では、教員免許がなければ、学校の先生として授業を行うことはできません。また、教員免許にはいくつもの種類があり、学校の種類(校種)や教科によって求められる教員免許が異なります。
例えば、小学校の教員免許を持つ場合、中学校や高等学校で先生として教育を行うことはできません。一方で、高等学校の教員免許を持つ場合、小学校や中学校でも一部教育を行える科目や活動はあるものの、基本的には小学校で働くなら小学校の教員免許、高等学校で働くなら高等学校の教員免許を持つことになります。
ここからは、教員免許の種類を詳しく見ていきましょう。

教員免許の種類

教員免許は、大別すると「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3つに分かれます。

出典:教員免許制度の概要文部科学省

  • 普通免許状

    普通免許状は、もっともオーソドックスな教員免許といえます。
    教諭、養護教諭、栄養教諭の教員免許がこちらに該当し、さらに「専修免許状」「一種免許状」「二種免許状」の3つに分かれます。この3つについては、後ほど詳しく見ていきましょう。
    普通免許状を取得するには、学位(大学や大学院を卒業した方に与えられる称号のようなもの)と教職課程などでの単位修得によって「所要資格」を得た上で、必要な書類を添えて申請を行います。
    幼稚園、小学校、特別支援学校の自立活動であれば、教員資格認定試験に合格することでも、「所要資格」として認められます。
    普通免許状は全国で有効です。有効期間に期限はありません。
    もし普通免許状を取得した後に、上位区分(一種免許状であれば専修免許状)や、ほかの教科の普通免許状も取得したいと思ったら、一定の教員経験があれば、通常より少ない単位数の修得でほかの普通免許状の授与を受けられます。

  • 特別免許状

    特別免許状には、教諭の免許状が該当します。社会的経験がある方が、教育職員検定を受けることで取得する教員免許です。
    例えば、看護師の方が、高等学校の教科「看護」の特別免許状を授与されたり、外国人の英会話学校講師の方が、中学校の教科「英語」の特別免許状を授与されたりするケースがあります。
    取得するには、任命または雇用しようとする方の推薦が必要で、授与にあたっては「教科に関する専門的な知識経験または技能」「社会的信望」「教員の職務に必要な熱意と識見」が求められます。
    普通免許状と同様、有効期間こそないものの、授与を受けた都道府県内の学校でしか有効ではないという側面があります。
    なお、教諭の免許状が該当しますが、幼稚園教諭の免許状は特別免許状にはありません。

  • 臨時免許状

    臨時免許には、助教諭、養護助教諭の免許状が該当します。
    学校が普通免許状を持っている方を採用することができない場合に限り、教育職員検定を経て授与されます。
    ほか2つの教員免許と異なり、3年間の有効期間が設けられている点に注意が必要です(学校が長期間普通免許状を持っている方を採用できない場合は、例外的に6年間になる場合もあります)。
    有効なのは、授与を受けた都道府県内の学校のみです。

教員免許(普通免許状)の種類

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ここからは、もっともオーソドックスな「普通免許状」について、主に学校の種類(校種)の面からそれぞれ解説していきます。

  • 幼稚園教諭免許状

    幼稚園教諭免許状は、幼稚園の先生として働くための教員免許です。
    専修免許状・一種免許状・二種免許状の3つがあります。
    専修免許状は大学院を卒業した「修士」の学位の方、一種免許状は大学を卒業した「学士」の学位の方、二種免許状は短期大学を卒業した「短期大学士」の学位の方に授与されます。
    なお、この3つで指導できる内容に差が出るわけではありません。ただし、二種免許状、一種免許状、専修免許状の順で、給与が上がるという傾向は見られます。

  • 小学校教諭免許状

    小学校教諭免許状も、幼稚園教諭免許状と同様に専修免許状・一種免許状・二種免許状の3つに分かれています。それぞれで指導できる内容に差異がないのも同様です。
    このあと紹介する中学校・高等学校の教員免許とは異なり、教科による区別はありません。そのため、小学校教諭免許状を持ち、小学校で働く先生は、さまざまな教科や活動の教育を担うことになります。

  • 中学校教諭免許状

    中学校教諭免許状は、中学校の先生に必要な教員免許です。
    専修免許状・一種免許状・二種免許状の3つに大別されますが、さらに以下の教科に分かれています。

    • 国語
    • 社会
    • 数学
    • 理科
    • 音楽
    • 美術
    • 保健体育
    • 保健
    • 技術
    • 家庭
    • 職業
    • 職業指導
    • 職業実習
    • 外国語
    • 宗教

      それぞれの教科の教員免許を取得するにはどうすればいいのかは、このあとの章で解説します。

  • 高等学校教諭免許状

    高等学校教諭免許状は、高等学校の先生になるために必要な教員免許です。
    上記で紹介した3つの教員免許と異なり、高等学校教諭免許状には専修免許状または一種免許状しかありません。つまり、「短期大学卒」の学位では高等学校教諭免許状は取得できないということです。
    高等学校教諭免許状も、さらに強化によって教員免許が異なります。専修免許状と一種免許状どちらもあるものと、一種免許状でしか取得できないものがあるので、それぞれ見ていきましょう。

    【専修免許状・一種免許状】
    国語・地理歴史・公民・数学・理科・音楽・美術・工芸・書道・保健体育・保健・看護・看護実習・家庭・家庭実習・情報・情報実習・農業・農業実習・工業・工業実習・商業・商業実習・水産・水産実習・福祉・福祉実習・商船・商船実習・職業指導・外国語・宗教

    【一種免許状のみ】
    柔道・剣道・情報技術・建築・インテリア・デザイン・情報処理・計算実務

  • その他

    校種や教科で区別できないものの、以下の普通免許状もあります。

    • 特別支援学校教諭免許状
      特別支援学校の先生に必要な教員免許です。
    • 養護教諭免許状
      生徒の健康を支える保健室の先生に必要な教員免許です。
    • 栄養教諭免許状
      学校給食の管理や、生徒への食事指導などを行う先生に必要な教員免許です。

      どれも専修免許状・一種免許状・二種免許状の3つそれぞれで取得できます。

教員免許の取り方

教員免許は、上記で詳しく解説した「普通免許状」がもっとも一般的です。
普通免許状を取るには、取得したい教員免許に応じた教職課程がある大学や短期大学に入学し、法令で定められた科目と単位を修得し、卒業後、各都道府県教育委員会に教員免許状の授与申請を行います。
校種や教科ごとにさまざまな普通免許状があるのはすでに解説しましたが、各教員免許を取るために、具体的にどのような大学・短期大学に進学すればいいのか、疑問に思う方も多いでしょう。
傾向ではありますが、幼稚園教諭免許状・小学校教諭免許状については、「子ども」や「児童」といった単語が付く学部や学科に教職課程が用意されていることが多いです。
一方で、中学校教諭免許状・高等学校教諭免許状については、教科によって対応する教育課程のある学部や学科が細かく分かれています。
例えば、国語や社会、地理歴史、公民は「文学部」、数学や理科は「理学部」、音楽や美術は「芸術学部」などに教職課程が設置されている傾向が見られます。
特別支援学校教諭免許状、養護教諭免許状、栄養教諭免許状についても、対応する教職課程を設置している大学の学部・学科に入学し修了することで、取得が可能です。
文部科学省は、教員免許状を取得できる大学の一覧を随時公開しています。詳しく調べたい方は、以下をご覧ください。

出典:令和6年4月1日現在の教員免許状を取得できる大学一覧文部科学省

また、立正大学でも各学部で教職課程を設置しています。
以下で取得できる教員免許と、対応する教職課程を設置している学部・学科を紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

教員免許を取った後のキャリア

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教員免許を取った後は、「学校の先生」になるのが一般的なキャリアです。
ここでは、公立学校と私立学校に分けて、教員免許取得後にどうやって学校の先生になるのか、また学校の先生になった後のキャリアまで、解説していきます。

  • 公立学校の先生になる

    公立学校の先生になるには、都道府県や政令指定都市の教育委員会が実施する、教員採用試験に合格して採用されることが必要です。
    私立学校の先生とは異なり、都道府県や政令指定都市に属する「地方公務員」として学校の先生になります。
    教員採用試験は、実施する自治体によってスケジュールなどが異なるのですが、例えば東京都の公立学校の場合、
    申し込み:4月初旬~5月初旬
    第一次選考:7月初旬
    第一次選考合格発表:8月初旬
    第二次選考:面接…8月中旬 実技…8月下旬
    最終合否発表:9月下旬
    このようなスケジュールです(最新の情報は必ず東京都教育委員会のホームページを参照してください)。
    東京都公立学校教員採用ポータルサイト

    まだ大学を卒業していなくても、大学4年生で教員採用試験を受けることができます。また、大学3年生の時点で受験できる制度を実施している自治体もあるので、就職したい地域の教員採用試験実施要項は要チェックです。
    公立学校の先生になる一番の魅力は、その安定性といえるかもしれません。
    公立学校の先生は地方公務員なので、一度就職してしまえば退職までキャリアが保証されています。また福利厚生も手厚く、年金や退職金も充実しています。
    一方で、就業先は決められない上に、数年ごとに自治体内で異動があることは、デメリットと受け取られることが多いかもしれません。
    公立学校の先生のキャリアアップとしては、最終的には校長や副校長、教頭などの管理職を目指すのが一般的です。
    若手教員から、学校現場での経験や複数の異動を重ねてベテラン教員へと成長し、「管理職選考試験」に合格することで、学校管理職に就くことができます。

  • 私立学校の先生になる

    採用試験といっても、公立学校のように年1回実施されるわけではなく、ほとんどの私立学校は一年を通して募集を行っています。
    また、募集するかどうか、採用試験の内容などは各私立学校によって異なり、先生の数が十分足りている私立学校であれば募集は行わないでしょう。
    採用試験についても、一般的に、書類選考 → 筆記試験 → 模擬授業 → 面接、といったステップを踏みますが、有無や詳細は各私立学校の自由です。
    そのため、私立学校の先生になりたい場合は、日頃から気になる私立学校の募集要項が出ていないか、過去にどのような採用試験が行われたのかを、確認・調査する必要があります。
    私立学校の先生になる魅力は、その自由度の高さといえます。
    働きたい学校は自由に選べますし、校風や方針なども自分に合った学校を選べます。公立学校と異なり異動もありません。
    反面、給与や福利厚生も各学校で異なります。休日がカレンダーどおりの公立学校と異なり、土日出勤を求められる可能性もあるでしょう。
    私立学校の先生のキャリアアップとしては、その学校の責任者や管理職を目指すことが第一に挙げられます。
    しかし、公立学校とは異なり、総務や経理、人事など、学校運営に関わる業務が行えることも少なくないので、幅広いスキルを身に付けることで「民間企業への転職によるキャリアアップ」も目指しやすいです。

まとめ

教員免許の取り方や種類、取得後のキャリアについて解説しました。
学校の先生を目指す方は、ぜひこの記事を参考に、教員免許の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
立正大学では、教職課程を履修することで、学部生なら大学卒業時に一種免許状を、大学院生なら大学院修士課程修了時に専修免許状を取得できます。

学部や学科によって、取得できる教員免許の校種や教科が異なるので、詳しくは以下のページをご覧ください。

立正大学では、来校型オープンキャンパスに加え、オンラインで立正大学を体験できるLIVE配信イベントも実施しています。
大学・学部説明動画も公開しているので、ぜひ一度、立正大学のホームページをご覧ください。