理事長挨拶

2024年4月より理事長に就任いたしました生駒雅幸です。

2022年に開校150周年を迎えた立正大学学園は、一世紀半の歴史から未来へ向けて新たな一歩を踏み出しました。「真実・正義・和平」を謳う本学の立正精神は、今を遡る800年前、天変地異の続く鎌倉時代において国を想い、人を想い、社会の安寧を祈られた日蓮聖人にその源流が求められます。お釈迦様の説かれた法華経より湧き出でた一滴が、日蓮聖人とともに悠久の時を超えて大きな河となり本学の今に続いているのです。

日蓮聖人の言葉に「我が門家は夜は眠りを断ち 昼は暇(いとま)を止めてこれを案ぜよ 一生空しく過ごして 万歳悔ゆる事勿れ」という一節があります。これは、我が一門の人々は、夜は眠る時間を惜しみ、昼間は少しの暇な時間であっても無駄にせず、充分に学び考えるべきである。そして一生を考えることもなく空しく過ごしてしまって、あとで悔いを万歳にまで残すようなことがあってはならない。という大意ですが、「止暇断眠」の姿勢を心がけることが、真実を求め至誠を捧げること、正義を尊び邪悪を除くこと、そして和平を願い人類に尽すことへと繫がっていくのではないでしょうか。身近な私達の日常に置き換えれば学生諸君は学びの場で、あるいは課外活動の場でそうした姿勢を心がけることにより、学問探求の深い成果を得、あるいは高いステージへと到達することができるのではないかと考えますし、社会人となってからは、本学で学び過ごした日々が様々な困難を乗り越える力となり、それぞれが社会を担う人材へと成長していくのだと思います。本学の卒業生で客員教授でもある登山家の竹内(たけうち)洋岳(ひろたか)氏は世界で29人目、日本人で唯一の8000メートル峰全14座の登頂者ですが、氏の言に「挑戦に欠かせないのは好奇心であり探求心であり、それを発揮できる環境に身を置くことができるか。そこが最も重要」という言がありますが、本学の環境こそが竹内氏の心と姿勢を育み偉業へと導いたのだと思います。

一方で、現代社会に目を転じると大学を取り巻く環境は厳しさを増しています。殊に18歳人口減少への対応は喫緊の課題ですが、これは選ばれる大学へのチャンスでもあります。10年後の本学があるべき姿をまとめた開校150周年立正グランドデザインのコンセプトには「多様性を尊重し、伝統と新たな知を融合することで、社会に革新をもたらすことのできる人材が集う学園」と示されました。そうした人材を育み、選ばれる大学としてあるためには単に学生教育研究の場としてあるのではなく「知の集積地」として日常的にその存在を社会に活かしていくことが求められます。

急激な時代変化の中で、本学はその教育研究の成果によりどのような社会発展への寄与ができるのか、本学でなければ出来ないことは何なのか、10年後に本学はどのような存在でありたいのかが問われています。開校80周年に当たる1952年より16年に亘り本学学長を務められた石橋湛山先生は、法華経の精神と学問の実践を一体化する生き方を説き、建学の精神を立てられました。そして今、本学には志を持って学ぶ1万人の学生とその保護者、学生たちを育む優れた教職員、そして学生たちの未来を生きる建学以来の卒業生等多くの校友の皆様がいます。根が深ければ枝は茂り、源が遠ければ流れは長いと日蓮聖人は言われましたが、本学の歴史と伝統を培ってきた立正人はまさに深き根であり長き流れであります。私も校友の一人として学園発展のため皆様とともに邁進する所存ですので、皆様には何卒ご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げまして御挨拶とさせていただきます。