辻村先生らが執筆された共著論文"War and Peace: Structural changes in the U.S. industries 1939–1958"が、国際学会 International Association for Official StatisticsIAOS)が発行する学術雑誌 Statistical Journal of the IAOSに掲載されました。この論文は、マクロ経済の主要な指標である国内総生産(GDP)の推計の基礎となる産業連関表の誕生と発展の経緯を記した内容となっています。

Kazusuke Tsujimura and Masako Tsujimura (2023) ""War and Peace: Structural changes in the U.S. industries 1939–1958"" Statistical Journal of the IAOS, 39(3), pp. 617-648. 

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https://content.iospress.com/articles/statistical-journal-of-the-iaos/sji220035
※論文のダウンロードは有料(27.5ユーロ)となっておりますので、もしお読みになりたい方がいらっしゃいましたら、tsujimura@ris.ac.jp にご連絡下さい。


論文の概要:

自動車や通信など、特定の財やサービスを生産する事業所の集合を産業と定義し、それぞれの産業間で、それぞれの財やサービスが、どのように取引されたのかを記録する統計資料を産業連関表と呼んでいる。各産業の産出(売上)から投入(原材料費)を控除した残差を付加価値と定義し、全産業の付加価値合計はGDP(国内総生産)と呼ばれ、一国の経済規模を測定する指標として利用されている。また各産業の産出のうち、他産業で原材料として使用された残余が、家計や政府の最終消費となり、一定の最終消費を充足するために、各産業がどれだけの産出をなすべきかを求める方法は、典型的な線形計画法の解法問題に帰着する。第2次世界大戦中に、アメリカ合衆国が生産した軍用車両は200万両、軍用艦船は6000隻、軍用航空機は30万機に及び、これらの軍備を、わずか3年弱で達成するための不可欠な要素として、産業連関表と線形計画法は多大な貢献をした。本稿の前半では、レオンティエフが発案した産業連関表と、ダウンツィグが考案したシンプレックス法が、具体的に、どのように利用されたのかを、当時の資料を駆使して検証している。また本稿の後半では、1939年、1947年、1958年のアメリカ合衆国の産業連関表を、線形計画法の応用であるレオンティエフ逆行列と、これから派生した三角化の技法で分析することで、この間の生産技術と産業構造の変化を具体的に検証している。