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川村ゼミナール×川越市立美術館 連携プロジェクト

更新日時:2025.07.31

川村ゼミナール(3年)では、2025年度前期の授業で埼玉県川越市にある川越市立美術館様と連携し、実際に美術館が抱える課題に対して学生が企画提案を行う連携授業を実施しました。学生自身がフィールド調査・課題分析・企画立案・プレゼンテーションまでを一貫して行い、地域の文化施設のマーケティングを実践的に学ぶ内容となりました。

現地調査と課題把握(4月~5月)

プロジェクトのスタートにあたり、学生たちは川越市立美術館を訪問し、美術館の理念、来館者の動向、悩みなどを丁寧にヒアリングしました。また、来館者の声を把握するために5月の上旬から下旬にかけて12日間アンケート調査を実施しました。学生自らが来館者に声をかけ、200名を超える有効回答を得ることができました。
アンケートでは、来館のきっかけ、実際の来館者の動向、興味を持った展示など多角的に質問し、傾向や特徴の分析を行いました。

中間報告会とグループごとの企画立案(6月~7月上旬)

得られた調査結果をもとに現状と見つかった課題について、川越市立美術館にて中間報告会を行いました。その後、学生たちは3つのグループに分かれて課題解決に向けた施策の検討に入りました。
各チームがそれぞれ「美術館の入りづらさをどう解消するか」、「地域とのつながりをどう深めるか」、「幅広い年齢層に来館してもらうには」など、独自の切り口で課題に向き合い、提案を構築していきました。

最終プレゼンテーション(7月中旬)

7月13日に各班がまとめた提案を川越市立美術館の方々を前に、具体的な施策内容、予算感、スケジュール、ターゲット像などを含めて発表を行いました。

実際の提案内容
Aチーム「ナイトツアー」 

Aチームでは、常設展のみを開催している期間の来館者数を増やす施策として、「ナイトツアー」を企画しました。この発表では「非日常×教育×交流」をキーワードに、親子で楽しめる特別な体験を通じて、美術館としての新たな価値を創造しました。
夜の美術館という日常とは異なる空間で、学びと交流の場を提供することで、来館の動機づけを高めるとともに、地域に根差した美術館にしていくことを提案しました。 (齋藤あかり)

Aチーム:
安部和希 木永梨咲 齋藤あかり 趙容凰

Bチーム「折り鶴アート」

Bチームでは、「交流」と「地域還元」をキーワードに取り組みを考案しました。その1つとして、来館者参加型の「折り鶴アート」を企画しました。
ご来館いただいたすべての方を対象にお気に入りの作品の色の折り鶴を折っていただき、集まった折り鶴で1つの大きなアート作品を作り上げていきます。また、製作の過程を公開し、訪れるたびに変化していく「みんなの作品」を楽しんでもらえるよう工夫をしました。
この取り組みを行うことで、美術館を中心とした新たな交流が生まれ、地域に彩りを添えられると考え、「折り鶴アート」を提案しました。 (恩田万緒)

Bチーム:
牛場悠斗 太田聖也 恩田万緒 別府克海

Cチーム「映画上映」

Cチームは、川越市立美術館を市民の誇りとなる存在にしたいという想いから、地元の方向けに映画上映を企画しました。「美術館は敷居が高い」というイメージを払拭するため、常設展と映画をセットにして販売することで、より気軽に足を運んでいただけるように工夫しました。
実際に映画観賞会を実施している美術館に問い合わせたところ、リピーターの獲得に繋がっていることがわかりました。この取り組みは、来館者数の増加や市民への還元の見える化にもつながると考え、映画上映を提案しました。 (渡部風花、小島優希)

Cチーム:
熊島大輝 小島優希 渡部風花

今回の連携授業を通じて、単なるアイデア出しではなく、現場で実際に活用されうる施策を提案するためには、情報収集・分析・具体化のすべてが必要であると改めて実感しました。
プレゼンテーション後のフィードバックを受け、自分たちの提案に対して新たな視点を得ると同時に、文化施設と地域との関わり方についてもより深く考える契機となりました。今回得た学びを、今後の企画立案にも生かしていきたいと感じました。

川越市立美術館様からのメッセージ

これまで当館では常設展・特別展観覧者にアンケートを取ってきましたが、今回は広く美術館利用者を対象に調査を実施いただき、アンケート回答の分析によって意外な来館者の傾向や当館の課題が浮かび上がったのは大きな驚きでした。最終報告会では、コストパフォーマンスや成功事例に基づいた学生ならではの着眼点によるユニークな企画をご提案いただきました。この連携プロジェクトを経て、当館も多くの気付きを得ることができたと思っています。

編集後記

地域の文化施設との産学連携を通じて、課題に対して自分たちなりの答えを導き出すこのプロジェクトは、学生にとって忘れられない経験になったと思います。
-現地に足を運び、人と対話し、データを読み解き、自分たちの言葉で企画を伝える-
このすべてが、今後の学びやキャリアに確かな自信と実践力を与える貴重な機会となりました。この場をお借りして、川越市立美術館の皆さまに深く感謝申しあげます。

執筆 安部和希・牛場悠斗・木永梨咲