心理学とは

心の仕組みを科学的な方法で理解する学問

「心理学」と聞いて皆さんはどんな言葉を思い浮かべますか?「心理カウンセラー」のような専門家が想像しやすいでしょうか。
その他にはサスペンス映画に出てくるような「犯罪心理」、ひょっとすると「マインドコントロール」のようなキーワードが浮かぶ方もいるかもしれません。確かにそれらは「心理学の知識と技術」を応用したものですが、一つの側面にすぎません。
「心理学」とは、心を深く知り、理解することで、人を助けたり、よりよい社会をつくることに活かそうとする学問です。
人の心は多種多様で、また時代の変化にも影響を受けるため、心を深く知るためには、既成の理論や概念だけでなく、様々な科学的アプローチが必要です。心を科学的な方法で理解し、それを自分のためだけでなく、他社とよりよい社会をつくるために学ぶのが「心理学」であると私たちは考えています。

科学的な心理学のはじまりと、基本的な考え方

科学的な心理学のはじまりはドイツの大学に設置された実験心理学の研究室から

今の科学的な心理学のはじまりは、1879年にドイツのライブツィヒ大学に勤めていたヴント教授によって、運用された実験心理学の研究室に由来するとされています。ヴント教授はそれまでの哲学的な心理学とは違い、実証実験を用いた科学的な心理学を構想し、「実験心理学の父」と称されています。

心理学の研究は、人の行動に注目することからはじまる

心理学の研究はヒトや動物の行動の数量を測定した上で、次のような統計を用いて検討します。

例)実験参加者がくじ引きで次のどれかの条件に割り当てられた場合の値段のつけ方は?

・条件1:折り方についての説明書を読みながら,折り紙の動物(うさぎ)を自分で折るように頼まれました。
・条件2:素人が説明書を読みながら折った動物(うさぎ)を見せられました。
・条件3:普段から創作折り紙を作成している人が折った動物(うさぎ)を見せられました。

「オークションにかけるので支払っても良い値段」をたずねられた実験参加者がそれぞれの折り鶴に対してつけた値段の平均値が上のグラフです。

結果は、
・条件2<条件1・条件3
・条件1と条件3の間に差がない
自分が折った動物は創作折り紙のプロと同等に値づけがされていたため、自分の折った作品は高く評価されるバイアスが働くと考察します。

日常生活はもちろん、いろいろな場面で活用できる心理学

「心理学」と聞くと、「心理カウンセラー」のような限られた職業や分野だけで用いられるものと思う方がいるかもしれません。
もちろん、そういった分野を志す方もたくさんいらっしゃいますが、実は「心理学」が活用される現場は「医療」「教育」「マーケティング」「コミュニケーション」など、幅広い分野にあります。
「医療現場で患者さんを支えてあげるための手法」「幼児の心理を理解した上で教育に活かす研究」「統計学も併用したマーケティング活動への応用」「チームでの活動を円滑にすすめるためのリーダーシップやプレゼンテーションなどのコミュニケーション力」など、「心理学」の活用できる機会はいたるところにあります。

活用の機会が多い分、心理学には実にさまざまな分野があります。

心理学のさまざまな分野

それぞれの分野で扱う実験内容や検討対象を例にあげてご紹介します。

認知心理

実験者が通行人に道をたずねている映像があります。
⇒Simon&Levin(1998)のYoutube動画はこちら
この途中で大きなつい立てを持った人が通り過ぎます。
実は、そのあと実験者が入れ替わっているのですが、映像を見ている私たちは、その変化に気づかないことが多いです。
このように自分が見えているものは全て理解していると私たちは思いがちですが、おおざっぱにしか認知していません。細かな変化には注意が向かずにその変化を認識できないことをチェンジ・ブラインドネスといいます。

発達心理

AとBのコップに同じ量のオレンジジュースが入っています。Bのジュースを、背の高いコップB'に移し替えました。AとB'、ジュースの量は同じでしょうか?違うでしょうか?
答えは、当然「同じ」ですよね。でも、幼稚園の年長さんだったら自信を持って「こっち!」とB'を選ぶことでしょう。ヒトが見た目は変わっても量は変わらないことを理解できるようになるのは6・7歳頃からとされています。それまでは見た目が一番、おやつが足りないと泣き出してしまったら、器を変えるだけで泣き顔が笑顔に変わるかも!?

学習心理

歯医者で歯を削られるキーンという音を聞いただけで、歯が痛いような感じや身震いがする人もいるのではないでしょうか。しかし、冷静に考えてみると音を聞くだけでは歯は痛まないのに、なぜそんなことが起きるのでしょう?
これは、学習心理学の「レスポンデント条件づけ」といわれるものの一つです。最初はネズミを怖がっていなかった幼児に、ネズミを見るたびに大きな音をさせたところ、ネズミ自体を怖がるようになったという有名な実験があります。これは、もともとは大きな音に対する感情であった恐怖がネズミと条件づけられた結果と考えられています。これは、アルコール依存症の治療などにも応用されています。

臨床心理

「友だちに嫌われたかもしれない」「あんなことして大丈夫だったかな」とふと頭に浮かぶことはありますか? 物事に対してある偏った考え方をすると,気持ちも偏っていきます。この例なら、おそらく不安な気持ちになると思います。反対に、「あいつとの仲なら大丈夫」と頭に浮かべば、そこまで不安にならないでしょう。ただ、この考え方が偏ってしまうと,友人との仲を過信して自分勝手な行動をしてしまうかもしれません。
認知行動療法は、このような考え方や行動、気持ちのつながりを中心に扱って、自分とも周囲とも調和のとれた、バランスのよい考え方や行動へ整えていく臨床心理学的な支援方法の一つです。「性格」など変えることが難しいものよりも、「思考」や「行動」といった変化を起こしやすい心の側面に着目する点が特徴です。

対人・社会心理

どちらが倒れた人を助けやすいでしょうか?
・1.街中でたくさんの人がいる中で見知らぬ人が倒れたとき
・2.たまたま自分しかいない公園で見知らぬ人が倒れたとき

これは、道徳性のなさではなく、状況の問題です。
その場に多数の人がいると認知することで、自分が援助する責任が分散されることが要因となって生じる現象です。

心理学ではこんなことも学びます

インクの染みで何がわかる?

 

どちらのデータで判断する?

 

子どもの絵からわかること

(左)3歳児が描いた人間、(右)4歳児が描いた人間

 

こころと脳の働きを探ろう

(左)1、(右)2

立正大学心理学部で学ぶ専門分野

授業で見る心理学

パーソナリティーって、なんだろう?

臨床心理学科 田中輝美教授による模擬授業
「パーソナリティーって、なんだろう?」

自分らしく生きるための心理学

臨床心理学科 小澤康司教授による模擬授業 
「自分らしく生きるための心理学」

消費者のこころの法則

対人・社会心理学科 八木善彦教授による模擬授業  
「消費者のこころの法則」

信じる心を科学すると社会や自分がみえる

対人・社会心理学科 西田公昭教授による模擬授業 
「信じる心を科学すると社会や自分がみえる」

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