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文学科・英語英米文学専攻コース:2021年度卒:井沢真:パニック映画から見る危機管理意識

目次

 はじめまして!文学研究科英米文学専攻博士後期課程2年の井沢真(いざわまこと)です。大学卒業後、大学院に進学し、昨年度からは博士後期課程に進学し、ウィリアム・シェイクスピアを中心とした17世紀イギリスの戯曲・演劇を研究しています。学部・大学院ともに、伊澤高志先生には大変お世話になっております。
 この回想録は、決して完璧な「卒論の書き方」を教えるものではありません。むしろ、なぜ私が今の研究分野に至ったのか、そしてその過程で経験した葛藤や発見を、皆さんに共有したいと思って書きました。私は遠回りをしたからこそ、今の研究にたどりつけたということを伝えたいと思っています。当時の私と同じように、目の前の壁に戸惑っているあなたに、少しでもひとりじゃないんだと感じてもらえたら嬉しいです。


 私は3年生になるまで、大学院に進学することは全く考えていませんでした。それはアナウンサーになりたいと思っていたからです。アナウンサーになりたいと思ったきっかけは、中学生の時でした。当時、放送委員会に所属しており、下校放送を担当していたのですが、ある日、音楽の先生から「あなたは本当に声がいい。あなたの声にとても癒されるんだよ。」と褒めていただきました。この一言がきっかけで「声を活かした仕事に就きたい」と強く思うようになりました。(後日談になりますが、昨年教育実習で母校の中学校に行った際、卒業してから10年以上経っているにも関わらず、先生と再会することができました!その時にこのエピソードを伝えると「ごめんね。全然覚えていないの。ただ、あなたが一歩を踏み出すきっかけになることができて嬉しい。」とおっしゃっていました。覚えていなかったことは残念でしたが、直接お礼を言うことができ、涙が出るほど嬉しかったです。)放送委員の仕事で毎日下校の放送を担当していました。担当してから半年ほど経ったある日、同級生から「夕方に井沢の声を聞くと、なんだか帰りたくなるんだよ」と言われました。この言葉がずっと胸の中にあり、いつか声を聞く人の時計になりたいと、本気でアナウンサーを目指すようになったのです。
立正大学に入学した私は、大学とアナウンススクールを掛け持ちする生活を始めました。当時の私の1週間はこんなスケジュールで動いていました。

• 月〜土は大学の授業📚(月、火、金で1限がありました。通学が約2時間かかるので1限だと5時起きなんです…。)
• 金曜の夜はアナウンススクール🎙️
• 水・木・土は朝5時〜12時までアルバイト(カフェでアルバイトをしていました☕️大学の授業と合わせるとほぼ毎日早起きしていました。今考えると生活リズムとしては悪くなかったかも…?)

という、今考えると正気とは思えないスケジュールで動いていました。今こんな生活したら1週間で倒れる自信あります💦 しかし、今だから正直に言いますが、無理をしてもいいことはありませんでした。「忙しくて疲れた」と言い訳ばかりして、授業を平気で休んだり、試験勉強をサボったり…。全てが中途半端で、必修科目をいくつか落としました。そんなダメ大学生の私にとって、大きな転機となったのが2020年でした。新型コロナウイルスの感染拡大によって、大学の授業が全てオンラインに切り替わったのです。(今現在、立正大学でアナウンサーを目指している人がいたら嬉しいですね。もしいらっしゃったら、全力で応援します!!🔥)


 オンライン授業という環境をポジティブに捉えた私は、今まで避けていた授業や受講を諦めていた授業をたくさん受けました。その結果、1年間で60単位を取得することに成功したのです。(英語英米文学専攻コースの年間制限単位は48ですが、資格課程の授業はこの制限に含まれません。そこで図書館概論や博物館概論など、卒業単位になる授業をたくさん受けたことで、この数字になりました。履修を組むのに2ヶ月かけた甲斐がありました。)
 この時期、外出自粛で時間を持て余した私は、アナウンサーになるために自宅で新聞やネットの記事を参考にニュース原稿を作成し、それを声に出して読むという練習をしていました。その中であることに興味を持ちました。それは「災害時における情報伝達方法」についてです。2019年に台風19号が関東地方を襲った際、特別警報が出ていたにも関わらず、避難をしなかった人が一定数いたというニュース記事を見たことがきっかけでした。私はどのような情報伝達をすれば人々は危機管理意識を持ち、避難を完了できるのかという問題に関心を抱き、この時期に防災士の資格も取得しました。(余談ですが、私は学生割引で取得できたので、防災に興味のある方は学生のうちに取得することをおすすめします。あとは市町村に取得したい旨を申請することで、取得にかかる費用を半額または全額負担してくれるところもあるみたいです。)
 そのまま災害情報学の分野で、他大学の大学院に進学しようと決意し、研究計画書を書き始めました。しかし、問題は山積みでした。先生との面談では「結局、あなたは現段階で何がしたいのかわからない」と言われる始末。どこまでを研究対象とするのか、具体的な市町村はどこか、調査方法は…? 一人で突っ走って、誰にも頼ろうとしなかったが故に起こった問題点ばかりでした。結局、考えはまとまらないまま願書を提出し、結果は不合格。この時点で卒業論文の提出締め切りまで残り2ヶ月という状況でした。


 落ち込んでいた私を救ってくれたのは、オンライン授業で受けていた、ルイス・キャロルの原書を読む授業でした。この授業はzoomを使って同時双方向で行われていたため、自宅から繋いでいました。全て英語で行われたため、予習と授業がとにかく大変でした。今だから言ってしまいますが、毎週、授業の前にお風呂に入って気合を入れてからじゃないとできないほどきつかったです。ただ、充実感はどの授業よりも高かったです。作者が読者を楽しませる意図を知るうちに、私は気づけば文学の虜になっていました。そして、入学前から興味があったシェイクスピアをほとんど英語で読んでいなかったこと、そして「お世話になった立正大学に何も恩返しができていない」という思いに気づきました。このまま大学に残って、やり残したことを終わらせようと決意したのです。


 人生をかけてシェイクスピアを研究するなんて、数年前の自分ならきっと驚くでしょう。実は私がシェイクスピアと出会ったのは、大好きな「推し」、元乃木坂46の生田絵梨花さんでした。(余談です。生田さんのファン歴は10年を超えました。今年の推し活は1月に『レ・ミゼラブル』、10月に『リア王』をそれぞれ観ました。シェイクスピアにハマってから大好きになった俳優の横田栄司さんと生田さんが共演しているのを間近で体感し、私は生きていて良かったと涙しました。『リア王』はいいですよ。一度観てみるのをお勧めします。)浪人生だった頃、受験勉強が辛くなり「この世から大学受験というものを消滅させたい」と思うほど追い詰められていたため、一度全てを投げ出し、運命に導かれて向かった先は赤坂ACTシアター。彼女が出演するミュージカル『ロミオとジュリエット』を観に行きました。ライブも何もかも我慢をしていた私ですが、この舞台だけは絶対に見なければいけないという使命感から観にいきました。それまで舞台には「退屈なもの」というイメージを持っていましたが、作品の世界に深く没入する感覚を初めて味わい、大きな衝撃を受けたのです。この出会いがきっかけで、「もっとシェイクスピアを知りたい」という思いが強まり、政治経済学部志望だった私は、英米文学専攻へと進路を変えました。


 他大学の大学院進学を考えていたのでそちらに合わせた卒論を書きました。テーマは、「パニック映画から見る危機管理意識」です。当初はノンフィクションの災害映画から「災害の教訓」を考察しましたが、見た人が全員思いつくような範囲のことしか言えないと言う壁にぶつかりました。そこで、フィクションやSF映画に目を向け、ゴジラシリーズから、人々の危機管理意識を比較分析することにしました。
 私が比較対象に選んだのは、本多猪四郎監督の『ゴジラ』(1954)、ギャレット・エドワーズ監督の『GODZILLA』(2014)、そして庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』(2016)の3作品です。日本の現実社会における危機管理の歴史や見解を背景に、フィクション作品においてもそれが反映されているのではないかと考え、考察を深めました。例えば、初代『ゴジラ』は戦後復興期の社会不安、特に水爆実験への恐怖を背景に、政府の対応や市民のパニックが描かれています。『GODZILLA』は、家族の絆や個人の奮闘に焦点を当てています。それと対照的に『シン・ゴジラ』は、官僚組織の縦割りや意思決定の遅さを生々しく描き、現代日本の危機管理のあり方を問うていました。それぞれの時代背景と国民性が、ゴジラという架空の災害への向き合い方にどのように現れているのか、比較することで多くの発見がありました。
 卒論で何よりも1番大切なことは先生とのコミュニケーションだと思います。進捗報告はとっても緊張しますが、先生は私たちが困っていたら必ず助けてくれます。こまめに先生と連絡を取るようにしてください。そこは私との約束です。
 卒論に関するスケジュールは以下の通りです。ほとんど、ゼミで何をやったかと対照になっていますが、先生とのやりとりもここには含まれています。英米文学専攻コースでは先生によってスケジュールが異なっていますので、ゼミに入った際、よく確認してください。


3年生で考えていたこと

 私は学部3年生の頃から4年生までは情報社会学に興味を持っていたのでそこと関連した映画を扱いたいと考えていました。そこで私は3年生の時のゼミで「ディザスター映画が伝える災害の教訓」というテーマで発表をしました。disasterは災害という意味で、映画で扱っているものは主に人々の生活に甚大な影響をもたらすものを指しています。私は災害を取り上げるのに、SF映画や非現実的な出来事を扱ってもあまり効果的ではないと判断し、ノンフィクションや実際に起こりうる災害を用いた作品を扱おうと試みました。ここでは『パーフェクト ストーム』と『インポッシブル』という2つの作品を取り上げました。どちらも実際に起こった災害がモチーフになっています。『パーフェクト ストーム』では2005年にアメリカ合衆国南部を襲ったハリケーン・カトリーナ、『インポッシブル』は2004年のスマトラ島沖地震における大津波の被害を描いています。(どちらも2025年現在、有料配信でみることができます。どちらも減災という観点から考えさせられる映画なので一度見ることを強くおすすめします。)この2つの作品を見た人々が得ることのできる災害に対する教訓を考察していきました。しかし、ここではあくまで視点は観客。作中の登場人物に対して深く言及できておらず、災害と心理描写の関連についてもまた同様でした。さらに、災害の教訓は「危険なところには近づかない」とか「安全対策は災害が起こる前から行う」など見た人が全員思いつくような範囲内のことしか言及することができませんでした。なぜこの2つの作品なのかという先生の問いに対して、たまたまだったとしか言えませんでした。もっと作品に言及し、2つを比較することでより考察を深めることができると思ったものの、具体的な根拠がないと詰まってしまいました。そこで、ノンフィクションのディザスター映画の上映を見た人々の影響を考えるよりも、フィクションやSF映画も視野に入れて、そこに描かれた一般市民の避難行動などの動きを考えた方がいいという考えにシフトしていきました。そこで「教訓」から「危機管理意識」へタイトルを変えました。


4年生で少し変更したポイント

 4年生で、変更したポイントとして他大学に出す研究計画書で日本の災害情報について触れようと考えていました。そこで、日本の災害とまずイギリスとの対比は何かできないかと考えました。しかし、イギリスが舞台となる映画で災害を扱った映画を見つけることができず、もう少し範囲を広げてみることにしました。そこで考えたのはゴジラというSF映画は日本とアメリカどちらの国でも触れられています。ゴジラの襲来をある種の災害と捉え、それぞれの一般市民の危機管理意識の描き方に違いはあったかという考えが生まれました。


卒論で苦戦したポイント

 文学部の卒論は2万字以上が規定となっています。私は、文字数を埋めることに必死で、肝心の自分の主張が弱かったと反省しています。論文を書く目的として、自分の主張を明示することだと思います。主張をするために先行研究はどこか、対象となる作品からきちんと言及できるかとあれこれ考えるのが、文学研究における論文の前提だと思います。しかし、私はあらすじや災害の種類に多く言及してしまったがゆえ、肝心の自分の主張部分が大幅に短くなってしまったと強く感じています。タイトル、章立ての時に、自分は何をここで書いているのか論の目的を確認しながら書くことが何よりも大切です。当たり前じゃん!と思いますが、私の場合、途中まで書いて保存をし、後日、続きを書こうとしたところ「あれ?この章って何が言いたかったんだっけ?」となりました。軸はブラさず、目的を見失わないことが大切です。


1・2年生

 大学生活は、バイト・サークル・遊びなどなど… やることだらけですよね。でも一番大切なのは、「授業」です。私は優先順位を間違えて単位を落としてしまい、必修科目に何年も泣かされるという経験をしました…💦同じ道はたどってほしくないので、まずは授業に出ることを最優先にしましょう!
 長期休みはダラダラとしがちだけれども、小さな目標を立てるといいです。例えば、「難解な本を3ページだけ読んでみる」「1つ新しいことにチャレンジする」みたいなすぐに達成できそうな目標を立てると後で大きな差になります。あとは興味のある資格(TOEICなど)を取ってみるのもいいですね!
 あと、大学のイベントにはできる限り顔を出してほしい!英語英米文学専攻コースでは、夏休み期間中に講座を実施していたり、舞台を見に行ったり授業以外にも活動をしています。私は学部生の頃に舞台観劇イベントに参加をして感動した経験があるのでおすすめです。(私は学部の時に観た『ヘンリー6世』と『リチャード3世』は忘れられません。『ヘンリー6世』は全部で3部作あるのでとっても長いです。午前中から夜まで1日がかりの舞台でしたが、時間を忘れるほど夢中になった記憶があります。歴史好きの私にとって思い出の作品です)
他にも、2025年度の夏休みに実施した講座は学習英文法再考という講座でした。下に概要が記載されているリンクを貼っておきます。この講座はまた開催されると思うので、詳しくはポータルサイトをこまめにチェックしておいてください。

立正大学英文学会 夏休み特別企画「学習英文法再考:中学から大学まで」のお知らせ


3年生

 英語英米文学専攻コースの方は、3年生からゼミが始まりますね。ゼミ以外にも、3年生は就活の一環でインターンに参加をしたり、教員志望の方は教採の一次試験があったり、忙しい日々だと思います。でも、ここからの1年が卒論の「たね」を育てる時間だと私は思っています。
文学・演劇を専門としている私のおすすめは、
• 他学科の授業を受けてみる(社会学科、史学科、哲学科の授業を私は受けました。視野が本当に広がったし、卒論を書く上で重要な事項もあったのでかなりおすすめ!)
• 本、映画、舞台を観まくる🎬🎭(オンラインで配信されているものもうまく活用してみるといいですね。)
• 気になった作品は何度も読んだり見たりして、疑問点を書き出してみる(文学研究の超大事な基礎です!)

ジャンルにこだわらず、いろんな作品に触れてみてください。私はイギリス文学のゼミですが、アメリカやフランスの作品も読んだり観たりしました。(The Great GatsbyLes Misérables はおすすめ!)その「面白かった」の積み重ねが、卒論にも、自分の研究にもつながっていきます。


4年生

 卒論の方向性が見えてくるけど、手を動かすのはなかなか大変な時期。まず一番言いたいのは、「論文を書く前に、論文を読もう!」です。いきなり難しい論文に挑む必要はありません。私は先生から「論文は筋トレみたいなもの。軽いところから少しずつ負荷を上げていけばいい。」と言われました。難しすぎる論文にいきなりチャレンジするのはちょっと危険かも…。まずは軽いところからチャレンジして、慣れてきたころに負荷を上げていきましょう!
 テーマは決まったけれども、どのように論文を組み立てていけばいいか分からないという方に、おすすめの本があります。下にリンクを載せておきます。
• 阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社, 2024)
(人文学系の学部生、大学院生に向けて論文やレポートの書き方を一から丁寧に説明されています。論文の「アーギュメント」の重要性がよくわかるのでおすすめです)

• 戸田山和久『最新版 論文の教室 レポートから卒論まで』(NHK出版, 2022)
(作文ヘタ男くんという主人公が先生に論文の書き方をレクチャーしてもらうという設定です。結構読みやすかったので、これもおすすめ。)

• 小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』(講談社現代新書, 2022)
(新書ですが、かなり読み応えがあって私は好きでした。論文を書く一連の流れを丁寧に解説してくれているものなので一読してみてほしい!)

実は数年前に教職課程の道徳の授業で、この本の書評を書いていたものを見つけたので載せておきます。
 小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』から見る論文執筆時における考察方法 −シェイクスピア研究を事例に−

それから、章立てを作ったら、書けるところから書く!私は「第1章がまとまらない…」と足が止まり、夏が終わりました…。書ける部分から動かしていくと、全体の形が自然と見えてきます。


 これまで私の学部での経験についてお話をしました。一直線で行けたら一番良かったのですが、色々遠回りしたことが、いま振り返るとすべて今の研究につながる必要な回り道だったと思っています。
 「完璧なものを書こう」と思うと、あれこれ考えすぎてしまい、手が止まってしまいます。論文は完全なものではありません。不完全だからこそ、何百年も研究が続いているのです。どこにも課題がないと言い切ってしまう方がむしろ問題だと思います。できなかったなと思うぐらいの論文でいいんです。完璧を求めすぎず、どこか抜けているぐらいの方が、かえって前に進めると思います。とりあえず考えすぎず書いてしまいましょう。書いてしまえばそれで終わるんですから。
 しんどい時は、一人で抱え込まず、ゼミ担当の先生に相談してください。先生は進んでいないことに対して怒るのではなく、原因を探って解決方法を一緒に模索してくださると思います。だからこそゼミの先生にこそ「論文が進まないです。助けてください。」と素直に助けを求めましょう!!もし「ゼミの先生は怖くて…」という状況であれば、周りの大人に頼りましょう。立正大学は学生の味方なので、助けてくれます。頑張りすぎ禁物!締め切り直前でインフルエンザにかかって提出ができなかった学生を知っています。無理せず、睡眠と食事は絶対取りましょう。
 卒論は、レポートとは違い、自力で一つの問いを立て、答えを導き出す、研究の厳しさと面白さを教えてくれる貴重な経験です。この経験は必ずあなたの糧になると思います。少し頑張ってみて、この貴重な体験を乗り越えてください。私は卒論執筆をしているあなたを全力で応援しています!🔥


私の研究紹介

 今年度、私はシェイクスピアの後期ロマンス劇『冬物語』をテーマに論文を書きました。この作品には、原作にあたるロバート・グリーンの『パンドスト-時の勝利』という悲劇の散文物語があります。ところが、シェイクスピアは、この原作の悲劇的な結末を大胆に書き換え、家族の再会と赦しによって物語を閉じています。私は、この大きな展開の差がどのように生まれたのかに注目しました。
 特に焦点を当てたのが、『冬物語』に登場する「時(Time)」のキャラクターです。作品の中盤で、時間が擬人化されて舞台上に姿を現し、物語が16年跳ぶことを観客に直接告げます。シェイクスピアは原作には存在しないこの装置を導入することで、悲劇的な出来事とその後を一本の物語として自然につなげようとしています。
 私は、「時」というキャラクターが果たす役割を、
• 物語構造を切り替えるスイッチ
• 登場人物の感情を再整理する「間」の役割
• 悲劇からロマンス劇へジャンルを転換させる仕掛け
と分析しました。
 16年という長い時間の経過は、劇の中では本来描けない「人間関係のほぐれ」や「心理変化」を可能にします。原作が破局で終わるのに対し、『冬物語』はこの時間の介在によって、和解のドラマへと大きく舵を切ります。私は、この「時の擬人化」こそが、シェイクスピアの再構成の核心だと考察しました。
 今後は『冬物語』をさらに深掘りし、「植物」という観点から研究を進めていきたいと考えています。


大学院進学を迷っている方へ

 「自分は頭が良くないから大学院なんて行っても意味がない」と思っている方が多いです。それに対して私はそうではないと思います。研究は、地頭の良さよりも、一つの物事に根気強く取り組める人の方が向いていると思います。
 私は高校まで勉強は大の苦手で、今でも、胸を張って得意だと言えないです。でも、自分が面白いと思ったことに関しては、とことん知りたいと思うし、それらを発信していきたいという気持ちがあったから大学院に進み、博士課程まで来たのだと思います。大学生、特に1・2年生は大変な思いをして、大学に入学したにもかかわらず、なぜこんな退屈だなとか、簡単だなと思うこともあるかもしれません。ただそこで投げ出すのではなく、少し頑張ってみることで、自分が本当にやりたいことが見つかるかもしれません。もしそのやりたいことが、「自分が学んだことを極めたい!」というのであれば、ぜひ大学院に来てほしい。大学院をもっと盛り上げていきましょう!待っています!


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