臨床心理学科の卒業生インタビュー
ボランティアをきっかけにカウンセラーという職種に魅力を感じたという野々下さん。臨床心理学科卒業・心理学研究科を修了し、現在は社会福祉法人青葉会リトルペガサスで発達障害の子どもを抱える家族の方々からの相談役を務めています。子どもの頃から人から相談を受けることが多かったという野々下さんが、心理学を学んでカウンセラーを志した経緯について伺いました。
子どもの頃から話しやすい性格だと思われたのか、身近な人に相談を受ける機会が多かったんです。その時は話を聞くことはできても、そこから何かを返すことができなくて、どうしたらちゃんと応えられるのかなと思ったことが、心理学に興味を持ったひとつのきっかけでした。高校生の時に大学の模擬授業があり、立正大学の心理学科の先生がいらっしゃったので、興味本位で授業を受けてみました。心理学についてこれほど勉強したことがなかったので面白く感じて、この大学の臨床心理学科を選びました。
心理学を勉強することで、自分自身を知ることができたのが、大きな糧になったと思います。例えば授業で心理テストをした時に、自分が思ってもいなかったことが得意なんだという発見もありました。そういったことを知ることで、自分が苦手な部分もカバーできますし、就職活動にも生かすことができました。自分のことをよく知ると、面接の時に相手に向かってより自分のことを知ってもらうことができると思います。私の場合は就きたい仕事が早くから決まっていたので、必要となる知識を身につけるため大学院へと進学し、臨床心理士の資格を取得しました。
学生時代にボランティア・サークルに所属していて、自閉症のお子さんの関わり遊び役をやらせていただいた経験がきっかけでした。ボランティアでは自閉症について学ばせてもらったり、子どもとのコミュニケーションを知ることができ、その知識をさらに深めたい思い、大学では発達障害を専門としている先生のゼミを選択しました。このような経験から、今は発達に心配のある未就学のお子さんと親御さんが通われる社会福祉法人青葉会リトルペガサスに就職し、子育てやお子さんに対する接し方をはじめ、全般的な相談を受けています。
親御さんたちは様々な悩みを持って相談にいらっしゃるのですが、例えば自閉症、ADHDなどの特性があるとしても、一人ひとりのお子さんによって特徴があり、私自身の接し方はもちろん、親御さんとの関わり合いによっても、お子さんの反応は変わります。それが難しさでもあり、やりがいにもなっています。私自身この仕事をはじめて2年くらいなので、日々学びながらの身ではありますが、通っている方は援助を求めているため、親御さんと同じ目線に立ち、専門職としてのアドバイスを伝えられるように努力しています。数年間にわたってお子さんの成長を見守れることができるのは、この仕事の楽しいところですね。
“答えのない”問いに対して、いかに本人の成長を促し、親御さんも納得ができる可能性や方向性を一緒に見出していくことができるところです。例えば、心配ごとがあり先々が見えなくて不安になっているのなら、今はこの発達段階だから次の課題はここ……といった発達状況を確認して先を照らすこともあります。今の仕事であれば、親御さんが“相談して良かったな”と感じることを伝えていきたいと思っています。このように“答えのないもの”を親御さんと一緒に探していくことができるカウンセラーという仕事に私は魅力を感じています。
萩原さんは大学卒業後、警察職員生活協同組合に就職しました。子どもが大好きで、学生時代からカウンセラーのボランティアをしていましたが、就職活動を通して、カウンセリングとは異なる現在の仕事を見つけました。警察職員を支える職務は楽しいと語る萩原さんにとって、心理学で学んだことは今も大きく影響しているようです。
子どもがすごく好きだったので、高校生の頃から小学校の児童館などで子どもの面倒を見るボランティアをしていました。このような場所では笑っている子もいれば、悩んでいる子もいて。。。私は悩んでいる子もサポートしたいと思ったのですが、そういった子が何を考えどのようなことに対して悩みを持っているのか分かりませんでした。その時に心理学を勉強したら、分かるようになるのではないかと思ったのがきっかけです。一人ひとりの心理に興味があったので、臨床心理学科を選びました。
大学2年生の時に受講したカウンセリングという実践授業です。私はこの頃から不登校児童支援のボランティアをしていたのですが、最初のうちは話をしても相手の気持ちが全然理解できませんでした。しかし、カウンセリングの授業で話の聞き方や接し方を覚えながら、同時進行でボランティアの現場で実践していくことで、徐々に児童と打ち解けられるようになりました。最終的に関わった児童が学校に通うようになってくれた時は、学んだことが身になっているのかなと、感じることができました。
最初はカウンセラーになりたいと思っていたのですが、ボランティアでカウンセリングを経験するうちに、私は対象の人に入り過ぎてしまうというか、自分で割り切れない部分を感じることがありました。それで、カウンセラーを仕事にするのは少し気が重く感じたので、私には向いていないと判断しました。その後、大学のキャリアサポートセンターから“公務員はどう?”と言われて、自分で公務員と民間企業の違いを調べていくうちに、公務員は人々の生活の安定を維持するための職務であることが分かり、そういった仕事に就きたいと思うようになりました。また、公務員の中でも警察職域に最も魅力を感じ、警察組織で働く方々を支えていきたいと思ったので、今の仕事を選びました。
私の場合、公務員になりたいと思った時に、まずは徹底的に調べることから始めました。様々な自治体に何度も足を運んで、担当の方に相談していくうちに今の仕事を見つけることができたので、どんなことでもまず行動に移すことが大事だと思います。
警察職員生活協同組合は、警察職域で働く方々に各種の共済を提供する非営利の団体で、仕事内容はおもに火災・災害・入院・死亡の際の保障と私的年金事業です。私はコンプライアンスを意識しながら迅速かつ正確に書類を処理するように心がけています。仕事をしていて嬉しいと思うことは、新聞やテレビのニュースなどで警察職員の方々が第一線で活躍している姿を見ると、こういう方々を支えていることを実感することができて仕事にやりがいを感じられるところです。
心理学を勉強することで、自分自身のことを知ることができたことが一番役に立っていると思います。自分は何を苦手で何を得意かということをある程度知っているおかげで、ストレスをため込むことなく、日々楽しく仕事ができています。あとは一緒に働いている方々の表情を見て、手一杯で困っているようなら声をかけてみたり、そういった気配りができるのも心理学を学んだおかげだと思います。この仕事に就いてまだ一年目ですが、できれば学んだことをもっと生かして、仕事場でも相談役になっていけたらいいなと思っています。