日蓮聖人御伝木版画
7.双親受戒 07/33 [翻刻]
双親受戒
清澄山の講堂にて並ゐる大衆に打向ひ法華経の
功徳を讃へて念仏無間禅天魔真言亡国律国賊と獅子吼
し遂に此寺を追放されてしはし華房の蓮華寺に
避難せる聖人は此も身を惜く所ならす。鎌倉こそまさ
しく法華弘通の好地なれ。いてや双親に暇乞して鹿
島立せむものをと小湊の我か家を音つれぬ。転ふかやう
に門辺に迎へたる家尊いる我子を上座に請して鎌倉に行
くへきよしを聞き訖り「我児なから天晴健気なる志法
華経の有難きはそなたより聞いて■う知りをるそ今日
より我等も心の中て黒髪ごそと剃りこほちて菩提の道に
入らんは妙法の妙の一字ハそなたより貰ひまするそ」と父
は妙日、母は妙蓮とさそくの発菩提心あら有難や。辱けな
やと聖人もしはし感に入り「御二方の得脱は衆生教化の
源にて候そ我も父上の日の字を母上の蓮の字とを合せて
今より日蓮と名を改め申さむ。明朗なること日輪に及ふ
ものなく清浄なること蓮華に若くものは候ハし。やか
て鎌倉に罷越して法華経の功徳を三千世界に弘通
せは其功我にあらすして偏に御二方の力に外ならし」と
懐にせる御経取りて「南無妙法蓮華経」と父母の額にあて
ぬ。これそ本門受戒の始なる。
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