日蓮聖人御伝木版画
25.女人日妙 25/33 [翻刻]
女人日妙
「玄奘は西天に法を求めて十七年十萬里にいたれり
伝教御入唐但二年なり。波濤三千里を隔てたり。此等は
男子なり。上古なり。賢人なり。聖人なり。未た聞かす女人
の仏法を求めて千里の路をわけしことを」鎌倉辻町のほ
とりに米砂丹を製して渡世のたつきとせる夫婦ものゝ
ありけるか聖人を渇仰すること深く夫かいまはの際
に厚く聖人に供養し奉れとの遺言を堅く守り今は
夫のかたミとなれる幼き女児を伴ひ関山萬重の雲を
凌いて佐渡に渡りて聖人を供養しぬ。聖人感嘆の餘り
一書を認めて其功徳を讃へぬ。「相州鎌倉より此国佐渡
の国其中間一千餘里に及へり。山海遙に隔て山ハ峨ゝ海は
濤ゝ風雨時に順ふことなし。山賊海賊充満せり。宿ゝと
まり/\民の心虎の如し。犬の如し。現身に三悪道の苦を経
るか其上当世ハ世乱れ去年より謀叛のもの国に充満し
今年(文永九年)二月十一日合戦、それより今五月の末未だ無間
安穏ならさるに女人の身として善く来ませることよ。日
本第一の法華経行者の女人なりとて不軽菩薩の名になそ
らへて日妙聖人と名を賜ひぬ。あらたかと釈迦牟尼仏多宝
仏十方分身の諸仏、上行無辺行等の大菩薩、梵天帝釈四天王た
ちか願の身に添ふか如く。此女人をは守り給へるにやあらん。
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