日蓮聖人御伝木版画
9.国策諫奏 09/33 [翻刻]
国策諫奏
天には彗星現はれて光芒闇の夜に物凄く大地
振動すること連月相つき山岳崩れ堂塔倒潰し
人家ハ■を乱して壊滅しつゝいて疫病ハ流行
し野に餓孚ありて人民流離するもの幾萬なる
を知らす。国難の到来目睫の間に逼れり。聖人
之を憂ひて文応元年七月立正安国論の堂々たる
大文字を草し終り之を前執権最明寺入道時頼
に献し薬師経の七難中五難既に現はれたれは
自界叛逆他国侵逼の二難もまたついて到来すへき
を豫言し謗法を抛ちて正法に帰すへきを痛論す。
過去及現世の誤れる信仰を改めて実乗の一善
に依るへし。然らハ仏国は衰へす宝土ハ摧れさるを
説いて丁寧反復言々聖人の肺腑より出てさる
ものなし。蓋し聖人熱誠の迸るところ即ち此一雄篇
の献策となりて幕府に反省と悔悟とを求めたる
なり。まことや立正安国の四大字は聖人一生の本願
にして一切の教義皆これより出て聖人か法華経の
行者たる所以も亦実に此に存す。然かも幕府は
恬として顧ミす聖人の献策も何等善き反
闇を将来せさるこそうたてけれ。
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