Vol.2 経営学部畢 滔滔教授

サンフランシスコ市の商店街活性化:協働型計画の役割に関する理論的・実証的研究

 2008年、私はカリフォルニア大学バークレー校の都市地域開発研究所(IURD, UC Berkeley)にて在外研究の機会を得て、サンフランシスコに渡りました。ホストプロフェッサーのJudith Innes教授(現カリフォルニア大学バークレー校名誉教授)の勧めの下で、商店街・近隣地区の再活性化で世界的に有名な都市であるサンフランシスコに関する調査をはじめました。

 日本に帰国後、研究を続けるために、科学研究費助成金(科研費)を申請し、幸運にも2回(若手研究(B)および基盤研究(C))採択され、科研費のサポートによって、サンフランシスコ市の主要な商店街・近隣地区のほとんどに足を運びインタビュー調査を実施、またサンフランシスコ市立図書館歴史センターの文章・映像資料をほぼすべて収集して分析することができました。6年に渡った研究の結果として、今回2冊目の研究書『チャイナタウン、ゲイバー、レザーサブカルチャー、ビート、そして街は観光の聖地となった』が、白桃書房より刊行されました。

著書『チャイナタウン、ゲイバー、レザーサブカルチャー、ビート、そして街は観光の聖地と
   なった:「本物」が息づくサンフランシスコ近隣地区』

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  *サンフランシスコのチャイナタウン

 中国系移民、ゲイ、反体制の知識人が住まうサンフランシスコのマイノリティ地区は、かつて当局に荒廃地区とみなされ、消滅の危機にあいました。それにもかかわらず、世界的な観光地に成長できたのはなぜでしょうか?この問題こそ、この本の基本的な問いです。

 本書は、サンフランシスコの3つの近隣地区、すなわち人種的マイノリティの近隣地区であるチャイナタウンおよび、性的マイノリティの近隣地区であるサウスオブマーケット、さらに反体制の人々が活動する近隣地区であるノースビーチの変遷を分析することで、この問題について検討しました。

 この本は、マイノリティの人々が互いに助け合い、権力と闘い続けてきた歴史と、現在も観光客を魅了しているマイノリティ・コミュニティの本当の姿を紹介しました。この本が、地域の活力低下に問題意識を持つ市民たちが街のアイデンティティを見つけ、街の活力を取り戻す一助になれば幸いです。

今後の研究の展望について

 市街地・商店街を再活性化するには、まちづくりにおいて地元関係者がイニシアチブをとることが不可欠です。このことこそが、サンフランシスコに関する調査を通じて痛感したことです。では、まちづくりに対する地元関係者の関心をどのように喚起し、また、市民参加のまちづくりをどのように制度化すべきか。この問題は、多くの都市が抱えている今日的な課題であり、これまでの研究で残されている課題でもあります。

 今後の研究において、協働型計画の発生と制度化に焦点を当てて、そのメカニズムの解明を取り組む予定です。具体的には、組織論や社会運動など関連する分野の先行研究を幅広くレビューした上で、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ市およびオレゴン州ポートランドに関する事例研究を行う予定です。サンフランシスコ市は、金融・貿易・IT産業の世界的中心であり、また、同市と周辺のベイエリアに著名な大学が数多く立地しています。それとは対照的に、ポートランド市は総合大学がなく、また、地方の経済中心に過ぎません。産業構成、経済的位置づけ、さらに都市を取り巻く環境が大きく異なるにもかかわらず、両市はいずれも協働型計画の確立に成功した代表的なアメリカ都市です。両市に関する事例研究を行うことによって、協働型計画の発生と制度化のメカニズムについて、より妥当性の高い結論を得られると考えられます。

*サンフランシスコの住宅街の壁画

*GLBTの人権運動を記念する最大のイベント:SF Pride