モラりすレポート

vol.19 企業の理念・活動の分析で社会をケア

2012/07/06

多種多様な企業活動の分析から、
みんながケアし合う、「共存共栄」の社会を追求する。

経営学部 経営学科  松村洋平 教授

経営学部 経営学科
松村洋平 教授

千葉県生まれ。明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。東京経営短期大学、青森中央学院大学経営法学部助教授を経て、現職に至る。現在は企業文化を中心に、経営組織、経営戦略についても研究している。編著に『企業文化(コーポレートカルチャー)経営理念とCSR』(学分社)、共著に『経営戦略(ストラテジー)企業戦略と競争戦略』(学分社)、『マネジメント・ベーシックス~基礎からの経営学』(同文舘出版)、論文に「組織アイデンティティに関する一考案」(2007年)、「中小企業経営者の理念と行動」(2009年)などがある。

人々の心に残る企業活動は、
利益追求の域を超える、何かがあるようです。

ショッピングの際、同じようなデザイン、品質、価格の商品が並んでいたら、何を基準に選びますか?
そんな時、製造した企業で選ぶことってありませんか?
それは、皆さんの中に、それぞれの企業イメージが醸成されているからです。
そのような企業イメージは、どのような企業活動でつくられていくのでしょうか?
そこには、企業にとって利益追求以上の、何かがあるようです。
さまざまな企業活動から、その精神や戦略を研究し、より良い社会を追求する松村教授に、ご専門に関するさまざまなお話を伺いました。

松村教授にお聞きしました!企業の社会的役割とは?

Q1. 五輪のような大きなスポーツイベントのスポンサーになることは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか

経営学部 経営学科  松村洋平 教授

A.基本的には、マーケティング効果は絶大です。スポンサーには、その業種カテゴリーに限定された独占的なマーケティング権利や機会が与えられます。スポンサーは、各業種の最先端をいく最も知名度のある企業と社会から認識され、また、イベントでそのスポンサー企業の製品が使われると、イメージはもちろんのこと、そのスポンサー企業の技術水準の高さの証明にもなるのです。
その反面、企業にとっては直接利益につながるものではありませんし、費用を集めるのも容易ではありません。しかし、イベントの企画・運営やボランティア活動、寄付行為といった「フィランソロピー(社会貢献活動)」、または、美術展、音楽会などの運営や協賛、文化施設の建設と開放といった「メセナ(芸術文化支援活動)」で、スポーツや芸術を振興することにより、消費者はこうした企業の考えや活動に賛同して、企業のファンになっていくわけです。

Q2. これからの企業経営に、メセナやフィランソロピーはどんな役割を果しますか?

A.企業の好業績を長期間保つには、「内向きの企業文化は長続きしない。外向きの企業文化が長続きする」という調査結果がアメリカで発表されています。“内向き”の企業文化とは、社内整備や狭義の技術向上ばかりに固執した経営を指し、これに対して“外向き”の企業文化とはお客様や株主、従業員などステークホルダーのことを第一に考えた経営です。
大切なのは、組織の外の人々が何を欲しているかを知ること。そのためには、メセナやフィランソロピーを通して、さまざまな人とコミュニケーションを図っていくことが、企業の持つ本来の力を高めていく手段になると考えています。また、社会貢献活動の際、NPO団体など異種の組織と一緒に行うことで、その企業が持つ新たな価値を見出すきっけになると考えています。

マネジメント、メセナ、フィランソロピーの関係図。 マネジメント、メセナ、フィランソロピーの関係図。 三者が相互に補完し合って、社会的価値を高めていく。 出所)上野征洋氏

Q3. 企業の人格・性格とも言える「企業文化」について教えてください。

A.「企業文化」とは、その企業が持っている“価値”や“信念”のこと。私はよく「企業文化」の例として、ディズニーランドを経営しているオリエンタルランドの話をします。社員約2千人に対し、アルバイトを約1万5千人雇用しています。そのことは、アルバイトをいかにうまく活用するかということにつながります。もちろん、しっかりとしたマニュアルもありますが、やはりその中に「企業文化」が活かされていると思います。
同社は、行動基準「SCSE」に基づいて運営されていて、その意味は「安全」(Safety)、「礼儀正しさ」(Courtesy)、「ショー」(Show)、「効率」(Efficiency)です。この順番がそのまま優先順位になり、全キャスト(園内スタッフ)にとって、ゲスト(お客様)に最高のおもてなしをするための判断や行動のよりどころになっています。

オリエンタルランドのテーマパークにおいて、キャストの行動のカギとなる「SCSE」

Q4. 「企業文化」の他に、企業にとって必要なことは?

A.企業経営は、「企業文化」「経営戦略」「経営組織」がお互いを補完し合って成り立っています。コストダウン、または差別化の徹底など「経営戦略」を進める中で問題が起きたとき、そこを補うのが「企業文化」なのです。「経営戦略」がうまくいくことで「経営組織」もうまく機能します。
たとえば、アメリカのサウスウエスト航空は、徹底的なコストダウンで有名な会社です。その反面、「従業員第一主義」を掲げ、お客様から苦情を受けても、従業員に落ち度がなかった場合、苦情主に「他の航空会社をご利用ください。」と手紙を出すという話が有名です。経営者が従業員を大切にすることで、従業員が気持ちよく働くことができ、それが最終的にはお客様を大切にするということにつながるのです。

Q5. 学生の皆さんは、どのように「経営学」と向き合っていますか?

A.私の担当しているゼミでは、「経営戦略論」をテーマに、2年次から、ケーススタディとしてグループに分かれ、企業を1社、ピックアップして分析します。企業自身の強み(プラス)あるいは脅威(マイナス)を分析して、そこから今後どのような戦略をとりうるのかを考えていきます。
たとえば、ライバル企業の多い(マイナス)コーヒー業界で、スターバックスが掲げている「家でなく、会社でもない、3つめの場所“3rd place”」というキャッチフレーズは、店内の広さや環境にこだわり、居心地の良さをウリに(プラス)していると分析されます。ゼミ生たちはフィールドワークとして、実際にお店に足を運びコーヒーを飲みながら時間を過ごし、その結論を再認識するといった現場主義的な姿勢で取り組んでいます。

松村ゼミにおける中小企業経営者とのセッション 松村ゼミにおける中小企業経営者とのセッション

Q6.立正大学が提唱する「ケアロジー(ケア学)」とご専門分野の関連は?

A.私の専門がケアロジーとかかわっている部分を考えると、メセナ、フィランソロピーかなと思います。これまでの、企業では、メセナやフィランソロピーが広告や宣伝、また商品開発につながると考えられてきました。しかし、もうひとつの考え方として、「世の中が良くならないと、企業が活躍する場所が減るのだから、社会貢献をして世の中を良くすることは、自分たちの活躍の場の創出にもつながる」という結論に、多くの企業が至っています。これを「啓発された自己利益」と言います。企業はたとえビジネスと直接的に関係ないところでも、社会の一員として共存共栄していくために、果たさなければならない役割があり、社会が発展していけば企業も発展していくのです。売る人・買う人・社会、みんなが良くなるためにケアし合う、「共存共栄」していく考え方がケアロジーだと考えます。

共著『経営戦略(ストラテジー)企業戦略と競争戦略』共著『経営戦略(ストラテジー)企業戦略と競争戦略』

共著『マネジメント・ベーシックス~基礎からの経営学』共著『マネジメント・ベーシックス~基礎からの経営学』

 

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