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環境のケア 中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」
2007年11月28日 環境のケア
中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」
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自分ひとりだけでも、できることをやる
(30枚目)
今から14年前、北海道の奥尻島というところに10日間滞在していたときに、たまたま大地震と大津波に遭遇したんですが、そのときに撮った写真です。
岩肌が露出して、海藻が1本もありません。黒く見えているのはウニです。ウニはコンブを食べて成長しますが、コンブも何もないから、岩に付着している色々なものを食べています。このウニ、苦くて食べられたものではありません。
奥尻島はウニとアワビの産地ですが、アワビもほとんどいませんでした。
漁師の方に取材してみると「こんな海にしてしまったのは私たち人間なんだ。先祖の代から山の木をどんどん切ってしまって、その悪影響で海に海藻がつかなくなってしまったんだ」とおっしゃっていました。それで、だいぶ前から山に広葉樹を植えて、海の復活をじっと待っていたそうです。
そして、去年同じ場所に潜って驚きました。
(31枚目)
見てください。山に木を植えただけで、鉄分やミネラルといった豊富な栄養源が海に流れ込んで、コンブが見事に繁殖したのです。向こうが見えないくらい茂っています。コンブの間をぬって潜ってみると、ウニやアワビがたくさんいました。感動しましたね。「サンゴ礁だって、干潟だって、キチンと守ってさえあげれば、これ以上人間の手で痛めつけなければ、こうして立派な海にかえれるんだ。今からでも間に合うじゃないか」と強く思いました。
豊かな資源があるのだから、それをみすみす捨ててはいけませんよね。「どうせもうムリだろう」「自分ひとりでやってもダメだろう」と思ってしまうことが一番おそろしいと思います。みんなで力を合わせなくても、ひとりだけでもいいから何か実行してみると、それが波及していくかも知れませんし、少なくとも地球は喜んでくれると思います。
自然界との関わり方
(31枚目)
これは、東京湾で撮ったカニです。初めてお台場で潜ったときに撮った写真です。
なぜ僕が東京湾に潜りたいかというと、江戸前を一生食べたいからなんです。“天然もの”を食べたいから海に潜っているのです。何だかんだいっても天然ものです。
このカニたちは、私たちが台所から流したプランクトンを一生懸命に食べています。ヘドロにおおわれた真っ黒な卵をはらんでいるのがわかるでしょうか。この卵を守るために、こちらに向かってくるんです。
このとき、「こんなところで産卵して、お母さんガニがかわいそうだな」と思っていまいまして、それで、母ガニを3匹すくって、神奈川県のきれいな海に放しに行きました。真鶴岬の堤防の上から「これが本当の海だよ。ここで元気な赤ちゃんを産みなさい」とその3匹をほうって、何だかいいことをした気分になってウキウキしながら帰りました。
でも、車の中で「あのあたりの深さはどのくらいだろう。7~8メートルはあるよな」と思った瞬間、「待てよ」と思ったのですね。カニは泳ぐ生き物ではないから、ただもがきながら落ちていくだけです。それでは単なるエサです。それも、卵をかかえた栄養満点のエサ。
おそらく、ベラあたりが最初に飛びついたでしょうね。足にかみついて振り回すと、その足がもげる。その音を聞きつけて次々と他の魚が集まってくるでしょう。実際に海に潜っていると、本当に残酷です。食べられる魚はあっという間に跡形もなくなります。3匹とも生き餌として僕が放った。ただそれだけのことなのです。こういうのを偽善者というのでしょうね。
これは、31歳のときでした。以来、僕は自然界で何が起きても手を出しません。たとえば、ヒナがネコにおそわれていようと見て見ぬふりをしています。
NHKが特別番組で、ガゼルなどの動物の子供が、ライオンやチーターに追いかけられて、首もとにかみつかれて倒されるというシーンを流したら、その瞬間から電話が鳴りっぱなしだそうですよ。小中学校の年配の先生が多いといっていましたね。「私は毎日教壇に立って、弱いものいじめはいけないと、みんな仲良くしようと教えている。それなのに、NHKともあろうものが何で弱いものがおそわれるシーンを流すんだ」とカンカンにおこっているそうです。
僕は、そういう先生に教わる子供たちがかわいそうだと思います。人間の社会と自然界を一緒にしてはいけないと思うからです。確かに100匹中99匹の赤ちゃんが食われます。でも、たまにテレビで見ますが、その中の1匹が起き上がって、トコトコと自分の群れに戻っていくんです。ライオンもチータもヘトヘトですから、だまって見過します。この生き残った子が家族の元に戻り、成長して、たくさんの子孫に強い遺伝子を残すことが、その種がいつまでも存続していくことになると思います。
人間の場合は、不幸にして病を背負っていたり、大病を患ってしまうお子さんもいます。しかし、家族の支えや本人の努力、まわりの友情などに助けられて、世界的に尊敬される学者や芸術家などになっていく人がたくさんいるわけですよね。人間の社会と野生の世界をごちゃまぜにして考えるのはこわいことです。
「自然界に何かしてあげよう」なんていうのはおこがましい話で、野生の生き物には「冗談じゃない、お前らは俺たちの何を知っているんだ」とおこられそうな気がします。行うべきなのは、何もしないことです。
東京湾のカニにも、何もしなければよかった。なぜならば、東京湾は乱開発と海洋汚染で生き物が激減して、カニとかスズキとか“強い”ものが残った。そこには外敵が非常に少ないから、カニたちはのびのびと暮らしていたかも知れない。まわりはヘドロだらけだけど、ヘドロとうまく付き合っていたカニだったのですよね。それを、よせばいいのに、へんな同情心を起こしたことで、一発で食われるようなことをしてしまった。これは、絶対にやってはいけないことだとつくづく思いました。
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