
HOME > 生涯学習・公開講座 > 過去の公開講座 > 立正大学スペシャル講義(2007) > 講義内容
環境のケア 中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」
2007年11月28日 環境のケア
中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」
1 2 3 4 5 6 7 
「オニヒトデvsサンゴ」の関係を崩した人間たち
(26枚目)
これは、温暖化が深刻になる前のテーブルサンゴです。きれいですね。
このサンゴが相当な酸素を供給しているのでしょうから、透明度もとても高いわけです。ところが、いまどうなってしまったのでしょうか。
(27枚目)
何とか温暖化を切り抜けたサンゴもいるのですが、今度はオニヒトデという、サンゴを食い荒らすヒトデが襲いかかります。サンゴはたまったものではありませんよね。
オニヒトデの好物は、テーブルサンゴやエダサンゴ。中でもミドリイシとコモンサンゴという2種類のサンゴがが大好物で、そこにいるだけ全部たいらげてしまいます。テーブルサンゴもエダサンゴも「そうはいかない」ってことなのでしょうか、成長がとても早い。健康な海であれば1年間に15センチくらいは伸びます。
オニヒトデは昔からいたらしいのですが、あまり見かけることはありませんでした。このオニヒトデは初夏に30万とも50万ともいわれる卵を産みますが、その卵をサンゴが食べてしまっていたからです。バランスが非常によく保たれていたのです。
ところが、沖縄が本土に復帰してから観光客が押し寄せるようになり、ホテルやら道路やらの建設で、沿岸を大幅に開発してしまった。その土砂が海へ流れてどんどん海を汚し、サンゴが赤土をかぶって窒息してしまったのです。
オニヒトデの卵は年々産まれます。一方、卵を食べる生き物が少なくなってしまったので、いたるところに出没するようになってしまいました。しかし、このオニヒトデ、本当に悪役なのかというと、そうではないと思います。
沖縄に棲む400種類のサンゴのうち、ほとんどの種類は硬い骨格を持っていて、その中にカッチュウソウを取り込んで生きているのですが、成長の早いテーブルサンゴがどんどん広がって日光をさえぎると、その下のサンゴたちは死んでしまいます。オニヒトデが成長の早いサンゴを食べることで上手い具合に間引きできていたのです。
そのバランスを崩してしまったのは私たちなのですから、オニヒトデには何も悪いところがありませんよね。
神秘的な一夜、サンゴの一斉産卵
(28枚目)
サンゴ礁が生存していれば、1年に1回、大産卵を展開します。
初夏の満月のころ、時間はサンゴしか知りません。
ですから、サンゴの産卵が近づくと、毎晩のように夜中の海に潜って、今か今かと待つわけです。
おそらくサンゴは、水温や天候、潮の流れも全部わかっています。「いま卵を産んで大丈夫か」と考えているのです。
一度、サンゴのピンクのカプセルが触手のところに現れて、一面ピンク色になったことがあります。一緒に潜っていた学者さんに「もうすぐですね」といいながらカメラを構えていたのですが、そのうち、それがすべて引っ込んでしまった。学者の先生が「もう今日は産みません、帰りましょう」というので、その日は引き上げたのですが、民宿に帰ってテレビを見ると、フィリピン沖に台風が発生したというニュースが流れていました。サンゴは、その台風がじきに沖縄方面に移動して大嵐になることが分かっていたのでしょう。びっくりしましたね。海の微妙な変化までもれなくキャッチして、それで排卵を決めていたのです。
写真の手前にある白っぽいサンゴの奥に、少し黒っぽいサンゴがありますね。これは、違う家族のサンゴです。
例えば、一方の家族から何億ものカプセルが産まれます。このひとつの固まりは「バンドル」といって、この中に卵子と精子が10個くらい詰まっています。
これがサンゴの一つの触手から1個ずつ産まれて、水面をふわふわ上がっていきます。それを見ると、まるで猛吹雪の中を泳いでいるような感じがしますよ。
産卵から3時間ほど経つと、パチンとはじけて精子と卵子が混ざり合い、7時間後にはプラヌラ幼生という、ひとつの生命が誕生します。
ただし、一方の家族から何億もの卵が産まれても、同じ家族どうしでは絶対に受精しません。近親交配をさけているのです。
ですから、サンゴは一斉排卵を行います。ひとつの家族が産卵をはじめたら、まわりの家族も一斉に産卵します。それによって、色々な家族と交配ができて、さらに強いサンゴの赤ちゃんが産まれて行くのでしょうね。
ちなみに、産卵は干潮にかかるときに行われるそうです。満潮のときに産むと、すべて岸に上げられてしまいますからね。引いていく潮の流れにのって、生まれ故郷からどんどん離れるように流れされつつ、自分のすみかとなる岩礁を探しながら、プリヌラ幼生は旅をします。
そして「ここに棲もう」と決めたら、一生懸命、潜って、泳いで、また潜って、岩の下に着床します。そうやって、サンゴの赤ちゃんが誕生するわけです。
それから、その赤ちゃんは海中の炭酸カルシウムを取り込んで白い骨格を作り、そして、触手を作ってエサを食べ、さらにまた炭酸カルシウムを吸収して骨格を作り…ということを繰り返して、どんどん大きく育っていきます。
(29枚目)
これが、2~3歳の赤ちゃんサンゴです。沖縄ではこういう生まれたてのサンゴの姿があちこちに見受けられます。先ほどの荒れ地のようなひどいところにも、よくよく見るとこういう赤ちゃんがちょこっと顔を出しているわけです。この赤ちゃんがちゃんと成長して5~6歳になって、産卵行動に加わってくれるように、私たちが気をつけなければならないと思います。海の状況を守っていかなければいけない。
いま、沖縄の海には今までなかったサンゴの伝染病がはやっています。また、ガンも最近みつかりました。サンゴを研究している先生たちも今まで見たことがない病気が蔓延しているものですから、細菌の専門家の先生方が海に潜って調査しています。
私たちの生活が便利になればなるほど、その生活によって海に何が流れ出ているか、そして、どんな影響を与えているかということを、きちんと検査しなければならないと思います。
サンゴ礁というのは島の人々の生命や財産だけではなく、たいへんな観光資源にもなります。そして、サンゴ礁のまわりには小魚がたくさんいます。また、サンゴ礁には豊富な酸素があるから色々な魚が産卵にやって来ます。そこで成長した赤ちゃんは、サンゴに守られながら、そしてサンゴに栄養をもらいながら成長して、沖に帰っていく。その繰り返しなんですよね。
サンゴ礁がなくなると、海の資源の恩恵が受けられなくなってしまいます。藻場もそうです、干潟もそうです。この三つは最低でも守らなくてはなりません。幸い日本には三つともそろっています。これ以上、絶対に減らしてはならないですよね。
1 2 3 4 5 6 7 
