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環境のケア 中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」

2007年11月28日  環境のケア
中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」

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サンゴの破片からはじまる壮大なドラマ

(12枚目)
サンゴのカケラが白い砂になって積もった、砂丘のような海。もう、まばゆいくらいに美しいところです。
この砂紋は、波の影響を受けてできたものです。台風のときには、さらに大きなうねりになると思います。

この、サンゴのカケラが壮大なドラマを作りあげていくという話を、少ししたいと思います。物事は全部つながっているというお話です。

(13枚目)
この顔を見てください。
この歯、強烈な歯です。実は、この歯でサンゴをガリガリかじって食べます。サンゴの中のカッチュウソウが食べたくて、硬いサンゴごとかじるのです。

そのときにおでこをガンガンサンゴにぶつけるものだから、こんなふうにおでこがめくれています。若いときは全然めくれていないんですよ。

この魚が、お腹いっぱいになると、消化されていないサンゴをフンとして海底にばらまきます。そしてそれが降り積もって、砂の固まりになっていきます。

(14枚目)
それがやがて、潮に流され、風に流されて、長い年月をかけて一カ所に集まっていきます。
ちなみに、海底にも竜巻が起きるんですよ。あちらこちらで竜巻が舞い上がって、それは見事なものです。

(15枚目)
こうやって、押し流された砂がだんだん降り積もり、砂州ができていきます。そうすると、今度はここに海鳥が翼を休めに来ます。写真の鳥はカツオドリですね。

(16枚目)
砂州はさらに少しずつ大きくなります。そこには、ヤシの実やマングローブの根っこなど、色々な植物が押し流されてきて、波によって砂州の上に打ち上げられます。
海鳥がフンをするので栄養があります。その栄養を取り込みながら、植物が芽を出し、どんどん大きくなります。

(17枚目)
やがては、このように立派に育ちます。
こうやって、ヤシやマングローブがどんどん生えると、さらに多くのカツオドリが集まって来ます。

(18枚目)
カツオドリの大きな群が集まり、ひとつの営巣地としてコロニーを作ります。
そして、やがてこのカツオドリたちがエサを獲るために一斉に外洋めざして飛び立っていきます。
狙うのはイワシですね。イワシの群は、ものすごく大きな固まりとなって海の中を泳いでいます。

1匹で泳ぐものはいません。なぜなら弱いから。小さなイワシたちは、生まれてから死ぬまで、一生、海中で逃げながら生活しなければなりません。彼らは単なるエサなんです。食物連鎖のかなり底辺の方にいます。
写真にはカツオが1~2匹小さく写っていますね。この下からカツオたちが狙っているのです。

カツオはかなり賢くて、イワシの群の中にわざとゆっくり入っていって、まず巨大な固まりをふたつに分けます。さらに、4等分、8等分と分けて、だんだん群の形を小さくしてから、そこに一斉に飛びかかっていくのですね。

(19枚目)
これがカツオですね。
賢いカツオたちは、イワシの群を下から上に向かって追い込んでいきます。上は水面ですから、逃げ場かなくなるのです。

そうすると、空からカツオドリたちがどんどん舞い降りてくるわけです。

(20枚目)
カツオも、勢いあまって海面に飛び上がることがあります。
この下にはカツオがうじゃうじゃしているわけです。これを、カツオドリたちは見逃すわけもなく、遠くの方から一斉に群に向かっていきます。

イワシたちにしてみると、下からカツオ、上から海鳥に狙われるわけですよね。

(21枚目)
そして、最後には人間たち。
カツオ漁師たちは双眼鏡で海鳥の動きをずっと見ています。カツオドリが頭を海面に突っ込んでいるときには、必ずそこにイワシがいて、カツオもいる、ということがわかるのだそうです。

こうやって、最後には、人間たちが釣っていただくというわけです。
これはインドネシアなんですけど、つくづく「のどかだなあ」と思います。カツオを2匹だけ釣って「もう帰ろうぜ」と言っているわけですよ。

日本だって昔はこうだったのではないかなと思います。しかし、冷凍設備を考案して、高速船・大型船になると、半年も1年もカツオを追い求めて外洋に出ていくようになった。なかなか帰ってこなくなってしまって、家族もさびしいですよね。

インドネシアの漁の風景を見ていると、「幸せって何なのかな」と思ってしまいます。自分の家から漁の様子が見えるし、漁場から自分の家が見える。魚が釣れると、この写真のように奥さんに合図を送るんですよ。

地球温暖化によるサンゴの白化現象

(22枚目)
では、深刻な問題に入りたいと思います。

これは12年前に沖縄で撮った写真です。このサンゴの中にはカッチュウソウが入っているので、いろんな色のサンゴが展開しています。赤い部分はエダサンゴですね。酸素が豊富なので小魚がたくさん泳いでいます。
しかし、最近あるコマーシャルを撮りに同じ場所に行ってみて、がく然としました。ちょっと見てください。

(23枚目)
これは同じ場所です。サンゴがほとんどなくなっていました。
これは地球温暖化の影響です。海水温の上昇によってサンゴが生きていけなくなって、全部死んでしまいました。

日本のサンゴは、30℃を超えると相当のストレスを感じてしまい、中に共生しているカッチュウソウをすべて吐き出してしまうのです。

それで、真っ白になってしまいます。

(24枚目)
カッチュウソウがいなくなると、このようになります。まるで白い雪を頂いたようですね。

一見、不謹慎ながら「きれいだな」と思ってしまいそうですが、実はいま、このサンゴはSOSを発している状況です。「助けて、暑いよ、何とかして」と言っているのです。このまま放っておくと、3週間後には全滅してしまいます。

(25枚目)
2カ月後に同じ場所で撮った写真です。もう、見るもむざんな姿になってしまいました。

「白化現象」が起きてしまうと、もう手のつけようがない。私たち人間がどんなことをしても、白化は治りません。助けてくれるのは台風だけです。台風が来ると海が大荒れになるので、30℃以上の熱い海水と深い冷たい海水が混ざり合ってかくはんされますから、水温が下がります。そうすると、海中にただようカッチュウソウが、またサンゴに戻ってきてくれるのです。

戻ってくると、光合成をして酸素を作ると同時に、その酸素や様々な分泌物など、生きるために必要な栄養をサンゴに与えます。サンゴの栄養源の9割は、このカッチュウソウだといいます。あとの1割は、自分で触手を開いて動物性プランクトンを食べて得ているのですが、そう都合よくエサは流れてきませんよね。だから、カッチュウソウがいなくなるとサンゴは死んでしまいます。

サンゴが呼吸をして二酸化炭素を出すと、カッチュウソウがそれをいただいて、酸素にする。そういう完全な共生関係が成り立っているのですが、地球温暖化によって壊されているのです。

これは1998年に撮った写真ですが、2007年は沖縄でこれまでにない白化現象が発生してしまったと学会の先生方が肩を落としていました。 しかし、台風が白化現象を助けてくれるのだと思うと、自然界はすごいと感じます。沖縄に行くと、台風が来て「たいへんですね」といっても、「何で?」と答える方がたくさんいます。窓を開けると風通しがよくなるから「クーラーいらずでイーサー」なんていうんです。また、農家の人たちは、台風が害虫を吹き飛ばしてくれるから「農薬いらずでイーサー」といいます。

台風に慣れているというだけではなく、台風の恩恵も感じているのですよね。
南の島には台風がなければダメだし、北の海には流氷が来ないととんでもないことになるということですね。

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