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環境のケア 中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」

2007年11月28日  環境のケア
中村征夫氏 「海の警告に耳をすませ」

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母なる海の3姉妹、サンゴ礁、藻場、干潟

それでは、1枚目のスライドをご覧ください。
これは、マーシャル諸島のマジュロ環礁を上から撮ったものです。
空の上から見ると、環礁がまるでネックレスのようにぐるりと輪になって見えるので、パイロットの人たちは「ネックレスアイランド」と呼んでいます。

左側の白波がたっている方が外洋側、右側が内湾。白波がたっている部分はサンゴ礁です。外洋の方から風が吹いて大きな波がたっていますが、サンゴ礁がそれをガシッと受け止めるので、人が住んでいるところまで大波は届きません。サンゴは、島の人の生命や財産を守ってくれているわけですね。

いま、こういった南の島々が危機に瀕しています。温暖化の影響で海面の水位がどんどん上昇してしまうと、やがてこの島も沈没してしまうのではないかともいわれています。

(2枚目)
これは、ミクロネシアのジープ島です。私の一番最近の写真集は、このジープ島の写真集です。
直径わずか34メートル。このちっちゃな島にも人が住んでいます。現在、10名分くらいの宿泊施設があって、日本人の若い女性や学生さんがひとりで遊びに来るくらい、人気の島です。

こんな島でも、どんな台風が来てもつぶれることはありません。まわりは全部サンゴ礁ですから、サンゴが受け止めてくれるのです。

世界には800種類ほどのサンゴがいます。また、日本の沖縄諸島や南西諸島には、その半分の400種類くらいのサンゴが棲んでいます。テーブルサンゴやエダサンゴのような代表的な種類は、見ばえがよくて「癒し」になりますよね。でも実は、サンゴのほとんどの種類は、成長のおそい、石のようなものなんです。そういうサンゴが堤防の役目をはたしてくれているわけです。

(3枚目)
これは日本の海。カジメの海と呼ばれる、海藻が繁茂している海です。
海藻は、太陽の光を受けて光合成をして、どんどん酸素を供給しています。ですから、海藻のあるところは非常に透明度が高いですね。この海藻があるおかげで、アワビやサザエ、ウニが育ちます。
藻場である海藻の森、そしてサンゴ礁、それから干潟。この3つは、絶対に失ってはいけない海の大資源だと思っています。

「だんご3兄弟」という歌がありますが、これはさしずめ「3姉妹」ですね。海は「母なる海」というくらいだから女性ということにして、「姉妹」としましょう。この「3姉妹」は全部、酸素を供給してくれるものです。その理由を、いまから少しお話ししましょう。

(4枚目)
海藻と同じようにサンゴも光合成をします。
このサンゴは緑色ですね。それは、カッチュウソウという海藻がびっしり詰まっているからなのです。
カッチュウソウは、植物プランクトンの一種です。ふだんは海に漂っていますが、それでは、みんな魚のエサになってしまう。このプランクトンたちは「どうしようか」と考えたでしょうね。それで「そうだ、サンゴは動物だ。しかもエビやカニ、ゴカイといった生きたものしか食べない。だったら、サンゴの触手から中に入りこんで、そこに棲んだらどうだろう」と思いついたのでしょう、1平方センチメートルあたり何億というカッチュウソウが詰まっています。

サンゴの組織はとても薄いものですから、こうやって透けてみえるわけです。カッチュウソウが全部いなくなると、サンゴは真っ白になってしまいます。サンゴの原型は本当は白いものなんですけれども、健康なサンゴはこのように、緑とか褐色とか、いろんな色をしています。これは全部、中に詰まっている海藻の色です。

この海藻が光合成をして酸素を送り出している。だから、サンゴ礁の海はとてもきれいで、透明度が高いのですね。

(5枚目)
エダサンゴの枝の中やテーブルサンゴの下には、無数の動物たちが棲んでいます。海の中は昼型と夜型にはっきり分かれていて、昼型の魚が寝静まったころ、夜型の魚が奥の方からこっそり出てきて、油断している昼型の魚をバクバク食べてしまうのです。ウツボやサメ、タコ、エビ、カニなどが夜型です。

(6枚目)
これは、東京湾の干潟です。「3姉妹」のひとりですね。干潮になって潮が引いたところで、海底が露出しています。

この一面の穴と黒い固まりは、ゴカイの穴とそのフンです。「こんなにゴカイがいたの?」と思いますよね。
よく「干潟を守りましょう。なぜなら、野鳥が来るから」というけれども、そんなもんじゃない。

ゴカイの穴は数十センチの深さがあるのですが、その穴からゴカイがポンポン顔を出して、フンをします。このフンは何かというと、すべて私たちの台所などから汚水として出した「栄養」です。この栄養によって大量のプランクトンが発生して、それが死んで膨大な酸素を消耗してヘドロとなっていきます。その大部分をゴカイなどの海の生物がせっせと食べて、海を浄化してきれいなフンを外に出している。たいへんありがたい生き物なのです。
やがて、潮が満ちていきます。

数十センチのゴカイの穴の中には空気が入っていますから、潮が満ちてくると空気がポコポコと上がっていって、海の底になった干潟には酸素が充満します。酸素が充満していると、そこからカレイやらヒラメやら、いろんな生き物たちが産卵にやって来ます。そうして、卵を産んで、また沖に帰っていくのです。卵からかえった稚魚たちは、干潟に巧みに隠れながら暮らし、プランクトンを食べて大きくなって、やがて沖に向かう。そして産卵のときには再び干潟にやって来て、また戻っていく。この繰り返しです。

この干潟を失うと、江戸前はもう一切食べられなくなります。江戸前どころか、日本列島の海外線にある干潟がなくなってしまうと、とんでもないことになります。「干潟を守りましょう」というのは、こういうことなのです。

(7枚目)
これは知床の流氷の写真です。下はラウスコンブなどが繁茂しています。
この下を見てください。

(8枚目)
流氷の下は、黄緑色をしています。上から見ると白銀の世界ですが、ひと度下に潜ると黄緑色です。これは植物性プランクトン。アイスアルジーという名前がついています。「流氷が来ると豊穣な海が約束される」と昔からいわれてきました。僕はずっと「何でかな」と思っていたのですが、その謎が海に潜ってようやくわかったのです。

この植物プランクトンはロシアから来ます。ロシアのアムール川という、原生林を流れる川。ここには、植物プランクトンやミネラル、鉄分が豊富に含まれた水が流れています。それが、やがて冬になって凍り、風と波に押し流されて、どんどん発達しながらオホーツク海を渡り、結氷します。そうなると船も出せない状態になるけれども、でも、その下に潜ってみると、上は真っ白なのに下は真っ黄色という異様な光景です。ここに、ロシアから渡ってきた植物プランクトンがびっしり詰まっているわけですね。

この植物プランクトンは、いわば海の中の食物連鎖の原点。一番大事な部分です。
もっと氷に近づいてみると、この植物プランクトンを求めて、小さなエビやカニなど、動物性のプランクトンがびっしりと集まり、植物性プランクトンをバクバク食べています。その動物性プランクトンを求めて、イワシ集まります。「流氷の天使」といわれるクリオネも、言ってみればただのプランクトン。動物性プランクトンとして小魚に食べられる運命にあるのです。

さて、そうすると今度は、イワシを求めて、ひとまわり大きな、ニシンから何から、たくさん集まってくるわけです。ニシンやサケ、マスを追い求めて、今度はトドやアザラシまでやって来ます。で、最後には、人間が網をしかけてゴソッといただくということになるのですね。

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