
HOME > 立正大学について > ブランドビジョン > 研究ビジョン > 立正大学ケアロジーカレッジ vol.2 福祉の実践で人と社会をケア
人はなぜ、困っている“他の人”を助ける必要があるのか?
福祉について“哲学”し、“実践”することで、
一人ひとりの答えを見つけてほしいと思います。
立正大学 社会福祉学部
大学院 社会福祉学研究科
清水海隆 教授
立正大学短期大学の専任講師を経て現職に。「福祉哲学としての仏教」「近・現代仏教福祉史」を研究テーマとしている。NPO法人T・M良薬センター(TMRC)の理事を兼任。
さまざまな支援活動の実際を知ることが、
支援したいという思いの、あと押しになります。
最近、育児が一段落した主婦など、
ボランティアや福祉の仕事に興味を持つ女性が増えているようです。
高齢者や問題を抱えた子どもたち、病気の人や障がいのある人たち、
そういった人たちの支援をするということは、どういうことでしょう?
「仏教福祉」をご専門とし、海外での支援活動を実践している清水先生のお話をヒントに、福祉について考えてみましょう。
- Q1. 「社会福祉学」とはどんな学問ですか?
A. 「福祉」という言葉には「幸福」という意味があります。そして人は誰もが、自分らしく充実した「幸福な生活」を送る権利を持っています。その権利を守るための、法律や制度など社会の仕組み、個人への社会的なサポートのあり方などを学ぶ学問です。保育、心理、教育、社会、生活といった幅広い学問領域を総合的に学ぶことで、豊かな社会を創造できる人材を育成します。
- Q2. ご専門の「仏教福祉」について教えてください。
A. 大学の講義では、まず学生たちに「多くの人は、自分が一番かわいくて自分の幸せを優先したいはずなのに、なぜ困っている“他の人”を援助したり、支援したりするのか?」と問いかけます。誰でも歳をとって高齢者になるし、病気になったり障がいを持つ可能性もある…お年寄りや障がいのある人は、なりたくてなったわけではないですよね。そういった人たちに手を差し伸べるということは、いったいどういうことなのか、一人ひとりに考えてほしいのです。ただ、その問いの解答は一つではありません。答えはそれぞれの人の中にある。つまり「仏教福祉」とは福祉哲学なんです。
- Q3. 「仏教」という言葉がつくのはなぜ?
A. 日本で生まれ育った一般の人の物の考え方の基本に、一番自然な形でしみ込んでいるのが、初日の出を拝んだりする「自然崇拝」と、お盆のお墓参りなどでも慣れ親しんでいる「仏教」である、と考えられるからです。宗教というと何となく敬遠する人がいるかもしれませんが、多くの人が、自分の理性だけで自己決定できるほど強い人間ではなく、各々が自分の価値観を決めるためのよりどころが必要なはずです。そして何をよりどころにするか、と考えたときに、陶汰されずに連綿と絶えずに残っている宗教というものがあり、日本人は、自然に仏教に代表される古来の思想をよりどころにしているのではないでしょうか。歴史の中で民衆の中に根付いた仏教思想が、多くの日本人の物の考え方の基盤になっている。それゆえ、その視点で福祉について考えてみましょう、ということです。
- Q4. 福祉の仕事に興味を持つ女性が増えているようですが?
A. 子育てが一段落したお母さんたちから「社会のために何かしたい、でも何から始めればいいのかわからない」という声を聞くことがあります。主婦の方々は、日々の暮らしの中で、現代社会のさまざまな問題に、一人の生活者として向き合います。子育てや親の介護、地域の活動への参加など、人に関わり、社会に関わる中で、諸問題に直接的にぶつかることでしょう。そういった経験を経てきた女性たちが、福祉について考え、実践していくことは人と社会との関係性の修復を目指すケアロジー(ケア学)の視点から見ても、意味のあることだと思います。
- Q5. 福祉を“哲学する”ことと“実践する”ことの関係は?
A. 一人ひとりが福祉の意味をしっかり考えて哲学すると共に、これを実践することで、豊かな社会が作られるのではないでしょうか。社会福祉学科では、福祉の現場で実践技能を身につけ、社会福祉士の国家試験受験資格を取得できるよう、さまざまな施設の協力を得て数多くの実習を行っています。また、学生スタッフが運営するボランティアセンターでは、社会福祉施設や個人からのさまざまなボランティア依頼に、学生をアテンドする活動もしています。私自身の福祉の実践としては、NPO法人T・M良薬センターで海外支援活動を行っています。
- Q6. NPO法人T・M良薬センター(TMRC)とは?
A. “援助が必要な人”と“困っている人たちの支援をしたい人”を結びつけるコーディネーターのような活動をしています。社会に何かしらの貢献をしたい、支援が必要な人たちに寄付をしたい、という方々の意思をできる限り活かせるよう、主にアジア各国の“現地での活動ができる”ところで、さまざまな支援活動を行っています。
- Q7. TMRC立ち上げのきっかけは?
A. 今から15年ほど前、私の仲間である日蓮宗の僧侶たちが、群馬県にあるハンセン病患者の施設で、駐在布教師として患者さんたちの支援活動をしていました。その経験をもとに、ハンセン病の患者さんが多くいるミャンマーでも何かお手伝いができないか、と現状調査に出かけたことがきっかけです。
- Q8. TMRCの主な活動について教えてください。
A. ミャンマーではまず、現地にマッサージ師を派遣してマッサージ師を養成する施設を作りました。その後、支部を作り、現在は現地の人を雇って井戸を作り、定期的に井戸水チェックをする活動なども行っています。内戦後の地雷撤去が終わったカンボジアでは、現地の業者に発注してこれまでに学校を4校作りました。ちなみに二つくらいの教室、職員室、保健室のある平屋建てが日本円で200~300万円です。ネパールでは、歴史の中に埋もれかけていた最貧困種族の使用言語復興を図っているネイティブの方の活動を支援し、ようやくウインドウズ用のフォントとして組み込めるようになりました。スリランカでは2004年の大津波の後に、学校やお寺の復興支援をしたり、現地の仏教会や自治体に復興資金の寄付を行いました。
ミャンマー井戸作りプロジェクト
スリランカ学校再建プロジェクト
- Q9. 今後の活動予定と希望は?
A. TMRCでは引き続き、援助の手が必要な人々がいるところに出向き、皆さんが安心して安定した生活ができるよう、さまざまなコーディネートをしていきたいと考えています。学内では、フィールドワークを兼ねたスタディツアーとして、学生たちを現地に連れて行ったり、ボランティアや福祉の仕事に興味を持っている社会人を対象に講座を開いたりしながら、自分たちにどんなことができるのか、と一緒に考える機会を作っていきたいですね。

